仙人の祈り

アベノミクス第二幕 - 注力すべき施策とは?

ものごとをシンプルに考えると、複雑な問題が、簡単に見えてくることがある。それは日本政府が思案する景気対策にも同じことが言えるかもしれない。

増大する社会保障費の財源として消費税を増税する一方で、低迷する景気の浮揚策として法人税の減税などを計画する。増税と減税が入り乱れる中で、全体として見ると、実は単なる所得移転となる危険性もある。

asap2014国民が望むのはインフレでも、円安でもなく、実質的な給料のアップである。もちろん、政権が目指す景気浮揚策も給料のアップであり、方向性は一致している。ただ、その経路は、法人税減税→設備投資アップ→生産性改善→給料アップ→インフレの定着と、机上の空論感は否めない。

私が企業のトップへ取材をしていて感じるのは、そもそも法人税が下がって現金が増えたとしても、従業員の給料をベースから大きく引き上げるには、角度の高い中長期的な業績改善が見込まれる必要があるため、簡単ではないというのが本音だ。
[ 2014/11/21 18:00 ] 経済社会 | コメント(29)

政府日銀と国民の温度差

日本の国内消費は、春先の消費税増税による反動減だけではなく、足下でも盛り上がりに欠け、パッとしない状態が続いている。円安によるコストプッシュ型の物価上昇(悪いインフレ)が進む一方で、給与はそれほど上がっていないため、消費者は所得が実質マイナスになっていることを嫌気して、財布の紐を締めている。

政府・日銀はタッグを組んでインフレの醸成に躍起になっているが、それに関して私は否定的な立場を取っていない。日本人は誰かが何かをやらない限りは、自分から動くことをしない。ジリ貧が何年続いても、それを受け入れる方に体力を使う。こうした根強い閉塞感を打開するための旗振り役として、彼らのリーダーシップは評価できるし、市場も好感して株価を押し上げた。

superman20141101「日銀が政府のファイナンスを行っているとすれば由々しき事態」との見解を述べる識者がいるが、私を含め世界の投資家は、そのようなことはすでに疑いようのない事実として認識している。政府への金貸しだけでなく、最近ではGPIFによる日本株買いと米国債買い(QE3を終えた米国への資金供給)まで、裏で日銀が日本国債を引き受けるスーパーマンとなることで、すべて成り立っているのである。

日本は今、パンドラの箱を開けて、後戻りのできない勝負に出ている。私が一番の危機感を抱いているのは、国民にはそれが広く認知されていないことである。カジノの合法化に反対する一方で、実は自分の国が、一か八かの大勝負に出ていることには気づいていない。金融政策が実体経済へと波及するには熱が必要だ。政府・日銀と国民との温度差が埋まらない限り、興廃を分けるこの一戦において勝利を得ることは、夢と終わるであろう。

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[ 2014/11/02 18:00 ] 経済社会 | コメント(20)

無神論者の信じる神

私は神の存在を信じていない、いわゆる無神論者である。欧米のホワイトカラーにそれを言うとリアルに軽蔑されるが、公的文書にもしっかりと「信じている宗教」の欄の最後にある「なし」にチェックを入れている。

世の中の多くの争いは、どの流派の神を信じるかが大義名分のようになっているが、無神論者の私からすると、どうしてもそのロジックに共感することができず、本音を言うと「すみません、ちょっと何言ってるかわからないんですけど」状態になる。

20141012『あなたは何も信じていない。では、あなたの魂はいつ救われるのですか?』と、某会議が終わった後のフロアで大真面目に聞かれたこともある。しかし、私の魂は、救われていないとは感じていないし、むしろこれから行く予定の美味しい焼き鳥屋への期待感で、ワクワクしているところである。

「焼き鳥になる鳥の魂はいつ救われるの?」と逆に聞くと、相手は軽く天を仰ぎ『鳥に魂はないから、救われる必要はない』と言う。「ふむ。日本では八百万(やおよろず)の神と言って、全てのモノに神が宿っていると昔から信じられているよ。川も石コロもバッタも、もちろん焼き鳥もね。」
[ 2014/10/12 20:00 ] 雑感 | コメント(22)

スコットランドの猩々たちを訪ねて

多忙につき、今回は散文的な内容に留め、後は皆さんからの質問にお答えすることにしようと思います。このエントリーに限って、可能な範囲で返答をします。

私の最近の活動の中で、印象深かった出来事は、エディンバラの大手基金のトップたちとのミーティングでした。当初は、私から投資先企業の説明をする予定でしたが、彼らの時間軸と視点が、あまりにも大きな流れで物事を捉えていたため、次第にトピックが歴史や民族史、自然科学などへとシフトしていきました。

Edinburgh2014_09まるで、スコットランドの森の猩々(しょうじょう)たちに教えを請う若手といった構図でしたが、彼らの基金は次世代へ受け継がれることを前提に戦略を組んでいるため、今上の物事を俯瞰して見ています。深いディスカッションのお陰で、私も新たな気づきを得ることができたので、彼らから受託しているファンドの投資先を、一部変更することに決めました。

皆さんが気になる日本株では、コーポレートガバナンスの強化や、機関投資家の行動指針(スチュアードシップ・コード)策定など、資本市場の改革に取り込もうとする動きが出てきています。あまりにもレベルの低い東京市場のクオリティーが上がれば、回転率の高いヘッジファンド以外の投資家も、日本株へのアロケーションを増やしてくるかもしれません。

それでは、皆さんよい週末を。~ウィリアム・ウォレスに思いを馳せて~スコットランドの森深くより。

小松原 拝
[ 2014/09/12 18:00 ] 投資全般 | コメント(45)

リクルーターが注目する「知性の質」

ITによって仕事が急速に一般化・汎用化される現代にあって、従来のような学歴重視の採用手法では、付加価値のある人材を効率良く獲得できなくなっていることは、周知の事実である。しかし「ではどうすればよいのか?」と問われると、明確な手段があるわけではないため、皆が困っているというのが実情だ。

私は、経営者からこのような悩みを相談された時、友人のリクルーターから教えてもらった、優れた人材を探し出す際に注目すべきポイントがあるという話をシェアする。彼女はこの手法により、大手金融やIT企業から絶大な支持を集め、人材コンサルとして独立するに至ったほどである。

interview201409その手法を端的に述べると、それは「知性」とは何であるのかを今一度考えてみる、というものである。「知性」というのは日本語では「知る」「性(さが)」と書くが、読んで字の如く、本物の知性とは「知りたい」という性分がどれほど強いかどうかで定義される。

「知性の高い人」というのは、自分の可能性が青天井に広がっていると考えている。「知りたい、学びたい」という欲求が最初にあるため、努力も、批判も、失敗も、すべてを受け入れる心を持っている。彼らは、内側から沸いてくる衝動によって動いており、自分の中での成長している感覚を、最も重視している。
[ 2014/09/04 18:00 ] 経済社会 | コメント(9)

私が還る場所 - 圭吾

ハッブル宇宙望遠鏡によって発見された129億光年かなたの銀河「GN-108036」。私は学者ではないが、民間でのバーチャルECUの開発経験があることを買われ、現在、「赤外線天文衛星」や「すばる望遠鏡」で撮影した画像データを解析し、星形成のメカニズムを研究するプロジェクトの手伝いをしている。

宇宙とは過去のこれまでの映像が時系列で納められた、広大な映像ライブラリーのようなものである。不思議なことだが、129億光年かなたの銀河を見るということは、129億年前の、宇宙が誕生して間もない頃の姿を見ていることになる。我々人類は、すでに過去を見ることに関しては、ある意味で究極まで達している。

宇宙物理学などとはまったく無縁のキャリアの私であるが、プロジェクトチームのおかげで勉強をするようになり、その深遠の果て無き世界を知れば知るほど、もっと早くにこの世界(本当の世界)に出会っていたら、これまでの人生の選択も、少しはまともなものとなったのではないかと、後悔の念が湧いてくる。

若気の至りと言えばそれまでだが、人付き合いでの失敗、仕事での失敗、お金での失敗、時間の使い方の失敗と、どうして人は失ってから気づき、失敗を犯してから反省するものかと、しみじみ思えてくる。もっと自分を俯瞰して見る視点を持っていたら、晴れやかな気持ちで、命の炎を燃やしてきただろう。
[ 2014/08/28 18:00 ] 雑感 | コメント(10)

大衆迎合のネット社会

ネット時代になって情報の垣根がなくなったにもかかわらず、何だかリアルの世界のヒエラルキーが、そのままネットの世界にも反映されているように感じるのは、私だけだろうか。

実名を強制するFaceBookがそれを助長しているのかも知れないが、ネットがリアルの世界での自己アピールに留まると、自制が効く反面、ツマラナイものになってしまう気がする。

0822_2014氷水をかぶるセレブや有名人よろしく、あれが米国発でなかったら誰も真似しなかったと考えると、少し切ない気持ちになる。(同じく難病の)「副腎白質ジストロフィー」のために「素手でドリアを食べよう」と日本人が投稿しても、決して盛り上がらなかっただろう。

ニュースにしろ、音楽にしろ、流行にしろ、ネットの力によって嗜好が大衆迎合することで、低いレベルで「妥協点」という名の「均衡点」が形成されてしまうことが増えている。そして新しいコンテンツもそこに合わせてつくられるため、悪循環から抜け出せなくなる。
[ 2014/08/22 18:00 ] 経済社会 | コメント(1)

強いチームの5つの条件

競争力のない会社の利益はゼロになる。たとえ現時点では競争力があったとしても、何もしなければ他社に追いつかれてしまい、やがて利益はゼロになる。結局のところ、儲かり続けるためには、競争力を磨き続けるしかない。

競争力を磨き続けるためには、継続的にイノベーションを起こさなければならない。継続的にイノベーションを起こすには、強いチームをつくらなければならない。日本企業の長期的低迷の原因は、最終的にはここへ行き着く。

5_2014では、継続的にイノベーションを生み出す強いチームというのは、どのようなものか、今回は筆者の考える必要条件を以下にまとめてみた。

少人数である

イノベーションは大所帯の組織から生まれることは滅多にない。一方で、1人では、知識や経験、思考力が不足し、良いアイディアが思いつかない。イノベーションを起こすのに最適なチームの編成は、多くても5人くらいがちょうど良い。これ以上の人数となるとノイズが増え、むしろ効率が悪くなる。
[ 2014/08/14 18:00 ] 経済社会 | コメント(7)
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自己紹介

check 小松原 周 (あまね);

ファンドマネージャー・アナリスト。日本株(東京)や米国株(ウォール街)の経験が長く、取材した会社は5,000社を超える。ここでは資本市場全般に関する見方や、経済、社会について、個人的に思うことを語っていきます。

*筆者はどのような場合であっても個別銘柄の投資判断に関して述べることはありません。**再三の警告にもかかわらず迷惑行為を続ける者には法的措置を取ります。

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