仙人の祈り

社長が8割

「会社を見る上で最も大切なことは何かと問われれば、間違いなく「社長の質」と答えます。会社の業績が伸びるか伸びないかを決める要素の8割以上は、社長しだいといっても過言ではありません。」

著書の中で述べたこの一節について、多くの読者から反響の声を頂いているが、この「社長が8割」説は、私が機関投資家として数多くの失敗を繰り返しながら発見した、効率のよいリサーチ手法の一つであると思っている。

80%2015ビジネスモデルや競争力の分析というのは、経験を積んだ人ならば、ほとんどが同じ結論に達する。皆が同じ結論に達するということは、ギャップがないことを意味しており、株で利益を得ることはできない状態と言える。

だが、皮肉なことに、現実にはまずそのようなことにはならない。会社と言うのは良い意味でも悪い意味でも、市場参加者の予想を大きく裏切り、まさかの展開を見せるのが世の常だ。まさかの大ヒット、まさかのシェアアップ、まさかの粉飾決算,,,etc。

【告知】「勝つ投資 負けない投資」

表題にありますように、著名投資家の五月さん(片山さん)と共著で、本を執筆しましたので、告知させて頂きます。

勝つ投資 負けない投資
究極の個人投資家である五月さんと、不敗の機関投資家である小松原、それぞれの立場のトッププレーヤーがタッグを組むという、ある意味で史上初の投資本となっています。

本書を執筆するにあたって五月さんと何度も打ち合わせをさせて頂きましたが、二人の間で共通の思いとして『これまでにない、誠実な本にしたい』というものがありました。ですので、もしかしたら読者の中には、もっと具体的な手法などが公開されているものと期待して購入される方もいるかもしれませんが、私たちはそれよりも大切な根っこの部分に、あえて絞って執筆しているということをお含みおき下さい。

私自身も、五月さんという有能な投資家のたどり着いた境地に直接的に触れることができて、本当に多くの示唆を得ることができました。読者の皆様にも、それを共有して頂きたいと思っています。これから投資を始めたいという方から、今よりもスキルアップしたいという方まで、すべての投資家にとって新たな発見があることと思いますので、ぜひお近くの書店やオンラインでお求め下さい。

東証Project(五月さんのブログ)
Flier
四季報オンライン

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自分で価値の計れるものに投資をする

読者の皆様、明けましておめでとうおめでとうございます。相場の方は新年早々から荒れていますが、私としては、いつものように落ち着いた心持ちで対峙しています。

私は「ファンダメンタリスト」であり、基本的にマクロ分析というものを信じていない投資家です。資源価格、信用不安、先進国の金融政策、景況感、テロ、疫病、自然災害etc、、、リスクファクターは数え切れないほどあり、それらすべてを予想することは、誰にとっても不可能であると考えています。

私は市場のリスクオン/オフの方向性を客観的に理解するために、AUD/USD(豪ドル/米ドル)を始めとした、30ほどの重要なデータを合成して作った独自の指標を持っており、正直、その的中率は有意に高いです。しかし、それでもその指標を見て売買の判断をするということは、まずありません。

世の中の個人投資家の方のコメントを見ていると、一つのマクロ要因を取り上げて上か下かを論じている人が多いですが、それはまったく意味のないことです。読者の皆さんの中に、ある特定のマクロと、その独自の予想によってポジションを持っている方がいるとしたら、その手法は卒業することをおススメします。

投資家というのは価値のギャップにお金を投じる人のことを言います。自分で価値を計れないものに、大切なお金を使ってはいけません。新年になり、あらためて自分が理解のできないリスクを取っていないか、チェックしてみるとよいでしょう。2015年も、皆さんにとってよい一年になるように、祈念しております。

心のバイアスと価値観の分散

物事の本質は多面的な視点で見ないと理解ができない。人間誰しもが生活していると何かしらの重力のようなものに引っ張られて、考え方や価値観にバイアス(偏り)を持つようになる。しかしそのバイアスのままで見る世界というのは、利己的で排他的なものとなる傾向があり、酷くなると別の考え方や価値観を攻撃し、蔑むようになってくる。

ネット上でどんどんとエスカレートしている「嫌韓」の動きはそのわかりやすい例であると言えるだろう。ごく一部のバイアスのかかった韓国人による過激な行動を取り上げ、それがまるで韓国人の総意であるかのように報じる。そして匿名のネット民達が油を注ぎ込み炎上させることで、それを見たプレーンな人が、新たに「嫌韓」というバイアスを持つようになる。

dog_and_girl2014私は職業柄、物事にバイアスを掛けない見方をしなければならないため、こういったことに対して特に敏感なのかもしれない。勝ち残る投資家というのは、最終的には「価値観の分散」という領域に達する。組織に固有の価値観を把握し、ポートフォリオに入れる銘柄がバラバラの価値観を持つように意図的に調整をするスキルがキーであることに気づくのである。

こうしておくと、景気ショックなどの不測の事態が起きた時でも、結果的にお互いの組織のキャラがショックを打ち消し合うようなパフォーマンスとなり、比較的ショックが軽く済む。これとは逆に、ポートフォリオが一方向のバイアスに偏った価値観を持っている場合、取り返しの付かないようなダメージを被ることになる。

お金の価値と人生の価値

投資をする人は「お金が欲しい」という目的が第一義的にあるわけであって、何もレジャーやボランティアでやっているわけではないだろう。もちろんそれでいい。結局のところ、まともに勉強して、まともにリスクマネーを投じない限り、まともなリターンを得られないし、市場でまともな会社が評価されて株価が上がる(資本コストが下がる)ことが、まともな社会の発展のために寄与することになる。

しかし、往々にして身銭を切って投資を行う個人投資家というのは、その先の目的を持っていない。「何故、お金持ちになりたいのか?」と聞かれて即答できる人は何割くらいいるだろうか?仕事を辞めて、豪邸に住んで、綺麗な格好をして、美味しいものを食べて、、、そう思う人が多いかもしれない。ただ、もし貴方が投資家として大成して実際にお金持ちになったとしたら、その願望はどうでもいいものになっているはずである。人はお金を得るほどに、お金を超えた価値を知ることになるからだ。

Slum_community201312マレーシアの貧しい家庭で育った友人のMは、子供の頃、病気に苦しむ母親の治療費を稼ぐために、近隣の住人たちに「何でも屋」を申し出てお金を稼いでいた。貧しい村であったため、隣人も決して裕福ではなかったが、多くの人は善意で彼に仕事を与え、時には食べ物や薬を恵んでくれた。Mはその後、猛勉強をして某アイビーリーグで経営学修士を取得し、ウォール街の投資家として優れた成績を収めるようになった。しかし、若くして大金持ちとなった彼は、ある日突然引退し、全財産をマレーシアで自身が設立した基金へ拠出してしまった。

基金は小さな子供のいる貧しい家庭に対して医療費や学費を支援するものであり、条件として、その子供が将来お金持ちになった場合に、再び同基金にお金を拠出してもらう設計となっている。また、基金の特別条項には、子供の頃のMに施しを与えてくれた村人の名前が記載されており、彼らが病気になった際に全ての医療費を支払うことも明記されている。彼は村人たちの一杯の飯の恩を忘れずに大人になり、それに報いることを人生の目的の一つとした。

効率的市場仮説を越えて - 相場の神は未来で待つ

2013年のノーベル経済学賞は米エール大学のシラー教授と米シカゴ大学のファーマ教授、ハンセン教授の3氏が受賞した。3氏の研究は資産価格の形成に関する実証的な分析であるが、個人的にはノーベル物理学賞のように人類の英知の先端を切り開くような発見と比べると、経済学賞は随分と霞んで見えるというのが率直な印象だ。

シラー氏は行動経済学が専門だが、「S&Pケース・シラー住宅価格指数」の生みの親として有名で、米国の住宅バブルに警鐘を鳴らしていたことでも知られる。シカゴ大学のファーマ教授は、「Efficient Market Hypothesis(効率的市場仮説)」を唱え、短期的な株価の予想は困難であるとしたが、一方で共同受賞した同大学のハンセン教授は、同仮説が成り立たないことを示し、長期の価格はある意味で予測可能であると説いた。

皇帝ペンギンの群れ今回はシカゴ大学で効率的市場仮説を説いたファーマ氏と、それを否定したハンセン氏が同時受賞したことが話題となっているが、それだけ資産価格に関する理論というのは曖昧で、決定的な要素の解明に至っていないことが垣間見られる出来事であると言える。ただ、効率的市場仮説は難解な市場と対峙するにあたって、自分はどのようなスタイルで望むべきかを示してくれるツールとしては役に立つので、ここで内容を簡単に述べる。

効率的市場仮説とはその名前のとおり、市場がどれ程までに効率的であるかを検証するものである。市場の効率性が低いと考える場合を「Weak Form」、中くらいを「Semi-Strong Form」、高いと考える場合を「Strong Form」と名付ける。Weak Formは市場が【過去のデータ】は全てを価格に織り込んでいると考えるものであり、つまり「テクニカル分析」を行ってもまったく意味がないとするものである。

己を知る - それはリスクを計る心の器

「彼(敵)を知り、己を知れば、百戦して危うからず」とは、春秋の呉に仕えた軍師である孫武が残した言葉であるが、現代になっても色褪せずに伝えられているのは、それが人生における真理をついているからだろう。ただ、自分自身と相手の思考や行動パターンが読めれば確かに向かうところ敵なしだが、実際にこれを実践しきれている人物となると、ごく一部の天才しかいないだろう。

一般人にとっては、敵はおろか、己の事さえ知ることが出来ずに、結局は行き当たりバッタリのゲリラ戦をのようなものを繰り返しているうちに毎日が過ぎ去っていく。では「どうして私たちは己を知ることが出来ないのか?」「何故、同じ失敗を繰り返すのか?」と考えてみた時、その答えは慢心や油断による自己の過大評価が原因ではないかと考えられる。

翔鶴人は過去は振り返れば容易に見ることができるが、過去の失敗は忘れ去りたいものリストNo1であるため、そこから逃避をしてしまう。一方で、自分が立っている時間の先端から未来を展望するためには、膨大な想像力を要する作業となるため、ついつい楽観をしてしまう。これはリラックスを求める脳の防衛本能でもあるが、過去から学ばず、未来を楽観していては、いつまで経ってもゲリラ戦から抜け出すことはできない。

若い人ほど自己を過大評価する傾向があるのは当然で、彼らは過去よりも、これから待っている未来の比重の方が大きい。「いつだって変われる」「後で本気を出せばよい」という慢心が、自分の中にあるほとんどのものが実は有限であることを忘れさせ、油断を生じさせる。根拠のないリスクを取れるのは若者の良いところだが、それによって幸運を掴んだ者はごく一部であって、全体的に見れば不要なリスクを取り失敗するケースの方が多い。
筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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