仙人の祈り

理論株価の計算 - 将来キャッシュフローの現在価値

「今後5年間、毎年3円のクーポンを受け取れる債券が、最終利回り3%で販売されていたとする。さて、この債券の現在の価格は幾らであるか?」

答えは100円である。金融商品の価格に明確な答えが存在することに違和感を感じるかも知れないが、この場合の価格は一義的に100円に決まる。もし仮に100円以外の価格で取引されていたら、無リスクで利益を得られる裁定取引の機会が生じることになる。

天秤inフランクフルトこれを式で示してみると以下のようになる。分子は投資家が受け取るお金で、この場合は毎年3円、そして最終の5年目には元本である100円が戻ってくる。分母は最終利回りで、この場合は3%なので1.03。分子のキャッシュフローを現在価値に割り引いている。
3/(1.03) + 3/(1.03)^2 + 3/(1.03)^3 + 3/(1.03)^4 + (3 +100)/(1.03)^5 = 100

このような式を初めて見る個人投資家も多いかと思うが、これは何も債券価格の計算のための公式などではなく、株を含めたすべての有価証券に当てはまるものである。将来に発生すると期待されるキャシュフローを現在の価値に換算した金額が、有価証券の価格になる。
[ 2013/10/30 18:00 ] 投資全般 | コメント(18)

効率的市場仮説を越えて - 相場の神は未来で待つ

2013年のノーベル経済学賞は米エール大学のシラー教授と米シカゴ大学のファーマ教授、ハンセン教授の3氏が受賞した。3氏の研究は資産価格の形成に関する実証的な分析であるが、個人的にはノーベル物理学賞のように人類の英知の先端を切り開くような発見と比べると、経済学賞は随分と霞んで見えるというのが率直な印象だ。

シラー氏は行動経済学が専門だが、「S&Pケース・シラー住宅価格指数」の生みの親として有名で、米国の住宅バブルに警鐘を鳴らしていたことでも知られる。シカゴ大学のファーマ教授は、「Efficient Market Hypothesis(効率的市場仮説)」を唱え、短期的な株価の予想は困難であるとしたが、一方で共同受賞した同大学のハンセン教授は、同仮説が成り立たないことを示し、長期の価格はある意味で予測可能であると説いた。

皇帝ペンギンの群れ今回はシカゴ大学で効率的市場仮説を説いたファーマ氏と、それを否定したハンセン氏が同時受賞したことが話題となっているが、それだけ資産価格に関する理論というのは曖昧で、決定的な要素の解明に至っていないことが垣間見られる出来事であると言える。ただ、効率的市場仮説は難解な市場と対峙するにあたって、自分はどのようなスタイルで望むべきかを示してくれるツールとしては役に立つので、ここで内容を簡単に述べる。

効率的市場仮説とはその名前のとおり、市場がどれ程までに効率的であるかを検証するものである。市場の効率性が低いと考える場合を「Weak Form」、中くらいを「Semi-Strong Form」、高いと考える場合を「Strong Form」と名付ける。Weak Formは市場が【過去のデータ】は全てを価格に織り込んでいると考えるものであり、つまり「テクニカル分析」を行ってもまったく意味がないとするものである。
[ 2013/10/24 18:00 ] 仙人 | コメント(27)

己を知る - それはリスクを計る心の器

「彼(敵)を知り、己を知れば、百戦して危うからず」とは、春秋の呉に仕えた軍師である孫武が残した言葉であるが、現代になっても色褪せずに伝えられているのは、それが人生における真理をついているからだろう。ただ、自分自身と相手の思考や行動パターンが読めれば確かに向かうところ敵なしだが、実際にこれを実践しきれている人物となると、ごく一部の天才しかいないだろう。

一般人にとっては、敵はおろか、己の事さえ知ることが出来ずに、結局は行き当たりバッタリのゲリラ戦をのようなものを繰り返しているうちに毎日が過ぎ去っていく。では「どうして私たちは己を知ることが出来ないのか?」「何故、同じ失敗を繰り返すのか?」と考えてみた時、その答えは慢心や油断による自己の過大評価が原因ではないかと考えられる。

翔鶴人は過去は振り返れば容易に見ることができるが、過去の失敗は忘れ去りたいものリストNo1であるため、そこから逃避をしてしまう。一方で、自分が立っている時間の先端から未来を展望するためには、膨大な想像力を要する作業となるため、ついつい楽観をしてしまう。これはリラックスを求める脳の防衛本能でもあるが、過去から学ばず、未来を楽観していては、いつまで経ってもゲリラ戦から抜け出すことはできない。

若い人ほど自己を過大評価する傾向があるのは当然で、彼らは過去よりも、これから待っている未来の比重の方が大きい。「いつだって変われる」「後で本気を出せばよい」という慢心が、自分の中にあるほとんどのものが実は有限であることを忘れさせ、油断を生じさせる。根拠のないリスクを取れるのは若者の良いところだが、それによって幸運を掴んだ者はごく一部であって、全体的に見れば不要なリスクを取り失敗するケースの方が多い。
[ 2013/10/17 18:00 ] 仙人 | コメント(36)

世界のプラットフォームの覇権争い - ガラパゴスのララバイ

App Annie社が提供する「アナリティクス(主にパブリッシャー向け)」や、「ストアスタッツ(主に個人向け)」を最近よく利用している。これらは世界中のAppStoreやGooglePlay、Amazon、Mac、Windows経由でダウンロードされたデータを、ほぼ完璧に、しかも無料で見ることができるという優れものだ。(ちなみに、同社は最近iBooksやKindleStoreなどの電子書籍のデータも提供し始めている。)

これらのデータを見ていると、世界のアプリ市場やプラットフォーマーの現状がよくわかる。例えば、2強となったAppStoreとGooglePlayだが、全世界でのダウンロード数では両社は拮抗しているが、売上では実はAppStoreがGooglePlayの2倍以上を稼いでいる。これはAppStoreのアプリの方が厳選されていることや、キャリア課金、クレジットカードなどの決済手段との紐づけがなされていることが要因として考えられる。

AppAnnieロゴ売上の内訳を見ると、何と両社とも80%程がゲームからの収入となっており、ゲーム市場が如何に重要であるかが分かる。日本で大ヒットとなっている「パズドラ」だが、世界には更にそれを大きく凌駕する「Candy Crush Saga(英国のKing社)」、「Clash of Clans(フィンランドのSupercell社)」が存在する。「パズドラ」のクオリティーが低いわけではないが、ガチャとカードの合成進化のメカニズムが海外では理解されないことや、iPadでの楽しさを実感できる作りとなっていないため、米国ではランキング20位と上手くいっていない。

日本のお家芸と思われたスマホゲームの世界でも、典型的な負けパターンであるガラパゴス化の気配を感じることには注意が必要である。日本で生活していると気づかないが、世界ではタブレットによるアプリの使用率が1/3を占めており(日本はわずか10%)、日本のゲームがタブレットを想定した作りとなっていないことも劣勢に立たされている要因の一つである。カードゲームを主体する考え方もガラケー時代の名残りであり、スマホゲームから始まった海外では、日本とは別の流れが生まれている。
[ 2013/10/11 18:00 ] 投資全般 | コメント(33)

こんな会社は絶対にヤダ - 占い師が意思決定をしている会社

中国の歴史物を読む人にはお馴染みかもしれないが、天下人として相応しくない人物が実権を握り国家騒乱となると、決まって占い師が出てきて国政に助言をするような事態となる。占い師は「今の不安定の原因は貴方が誅殺した誰々の亡霊のせいです云々」などと無茶苦茶なことを言うのだが、暴君に限って占い師の言う事だけは素直に聞き入れる。

これらはまだ科学も発展しておらず、迷信などが信じられていた時代であるため、まだ理解できなくもない。しかし私が不思議でならないのは、ボイジャーが太陽圏を脱出し、ヒッグス粒子が発見された現代においても、同じような話を聞くことがあるということである。企業の中枢部に、何故だか占い師や催眠術師や預言者がいて、経営判断の助言をしている事例が散見される。

水晶占い師具体的な企業名を書くことは出来ないが、某武富士などは社長室に占い師が常駐し、すべての社内の人事を決めていたという、信じ難い事実が明るみになったことがある。某玩具メーカー同士が合併するしないのいざこざがあった時も、反対勢力によって雇われた催眠術師が敵対する取締役に催眠術を掛け、取締役会で発言できなくさせたということもあった。

事業会社だけではない。昨年に免許取消となった某ムーンライトキャピタルに関しては、もともとファンドマネージャーなどおらず、占い師が銘柄選択をしていたことは業界では知れ渡っていた。ファンドの名称が「アマテラス」や「スサノオ」というのは出来過ぎのジョークだが、何も知らない個人投資家が被害を被り、行政や業界団体の監督能力が問われる事態となった。
[ 2013/10/06 18:00 ] 投資全般 | コメント(43)

能力と教育のパラドクス - 天才はどこからやってくるのか?

「何でも出来る人」というのが、たまにいる。私の知り合いにも、本業はアナリスト・ファンドマネージャーだが、スキーや野球、テニス、などのスポーツが万能で、音楽、絵などの芸術もプロ級の腕前で、かつ漫画や映画、ファションなどの娯楽や最新のトレンドも完璧に把握し、更にはいつの間にか勉強して資格をアップグレードしていたりする人物がいる。

電車の中で仕事を効率化させる啓発本を読み、家の近くのマックで100円コーヒーをすすりながらコツコツ勉強する真面目なサラリーマンの横を、このようなタイプの人は脇目も振らずに時速200kmくらいで追い越していく。「週末に剱岳に登ろうと思うんだけど小松原さんも一緒にどう?」と誘われても「あいにく人と会う用があるので」と仕事で多忙なフリをして断るが、実際には秋葉原でPCを見ていたりする(そういう時もあります)。

出現1876さて、私の経験上これらの「何でも君」には生まれ育ちにある共通点がある。それは、1)田舎の 2)平均的な所得で、3) 放任主義の家庭で育ち、4)異性の兄妹がいる、というものである。(レベルが違うかもしれないが)歴史上最も有名な「何でも君」であるレオナルド・ダ・ヴィンチは、フィレンツェの公証人の裕福な家に生まれたが、実際には子供時代の大半は田舎の小作人の家に育ち、また年の近い義母と生活した時期が多かった。

普通レベルのエリートは、親がエリートの家庭から出る確率が高いのは事実であろうが、それは高額な教育費を投じているという分かりやすい理由がある。しかし、エリートというようなレベルではなく、明らかに突出した能力や創造性を持ち、既存の物差しでは測り切れない人物となると、何故か田舎の何でもないところから、真夏の積乱雲の如く出現するパターンの方が多いというのが不思議である。
[ 2013/10/01 18:00 ] 経済社会 | コメント(29)
筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

記事の募集
  • 社会全般や政治・経済に関して、記事の寄稿を募集しています。お名前、タイトル、本文を記載しこちらまでお送り下さい
お問合せ
  • 出版・メディア関係の方のお問い合わせはこちら

管理人(Macoちゃん)が責任をもって小松原氏へ転送致します
人気記事(当ブログ内)
記事検索