仙人の祈り

「地方創生=農業改革」はメディアの描いた幻想

全中から監査権を奪い、単なる社団法人へ格下げしたことは、農協解体へ向けた第一歩として評価できる動きである。中長期的には、莫大な予算を持つ農林水産省も格下げに向かうだろう。ただ、安倍首相としては、農業改革を断行することにそれほど思い入れがあるわけではなく、その本心は、TPPに反対して日米関係の足を引っ張る彼らを押さえ込むことにある。

日経新聞のような”一流メディア”が、このような事態の本質を見抜けずに、「農業改革こそ地方創生の第一歩」と盛り上がっているが、これは明らかに論点がずれている。日本の農業はGDPに占める割合は1%程しかない、零細産業である。それが効率性を今の倍に上げ、輸出額も現在の4,000億円から引き上げたところで、地方はまったく潤わない。

shatter mall 201503それどころか、200万戸の農家に本当の効率化の波が押し寄せたら、地方から人はいなくなり、都市への人口集中が更に加速するだろう。海外の事例を参考にすれば、農業に係わる人口は100人に1人の割合で十分である。技術力、開発力に優位性のある日系の食品メーカーは、すでに海外での現地生産へシフトしており、日本の「農業」や「食」は、所得収支として国内に還元されている。

農業改革それ自体は、農協、県連、全農という無用なピラミッド構造を排除し、農家の赤字を補填しているだけの助成金を減らすという意味では意義のあることだが、地方創生には決してならない。この2つの事象をごちゃ混ぜにして、「地方創生=農業改革」という考え方で様々なことを進めていくと、多くの努力が徒労に終わってしまうだろう。
[ 2015/03/20 18:00 ] 経済社会 | コメント(18)

「クジラ」が「ゴジラ」になる日

「今日はクジラは動いたか?」世界中のファンドマネージャーたちは、毎日のようにブローカーに東京市場の売買フローを問い合わせている。彼らが気にかけているのは「クジラ」と呼ばれる、日本株の新しい買い主体(日銀、GPIF、共済、かんぽ生命、ゆうちょ銀行)の動向である。概算で27兆円もの買い余力があると言われる5頭のクジラは今、その一挙手一投足が、世界中の市場関係者から注目されている。

新たな買いインパクトという意味では、日本の個人投資家も無視できない。上昇相場の中でも継続して売り越し、「逆バリ投資家」として名を馳せてきた日本の個人投資家であるが、今になって買い越しに転じ始めている。事実、過去最高となる13兆円弱まで積み上がっていたMRF&MMFの残高は(NISAの待機資金も含まれる)足下で減少しており、逆バリの個人投資家が珍しく順バリになっていることがわかる。

godzzila2015そして、本物のクジラである海外の大手機関投資家は、まるでこれらの動きを見越していたかのように、昨年から継続的に日本株を買い越している。サード・ポイントのようなアクティビストだけではなく、コーポレートガバナンス・コードの導入が決まり、先進国で最低となっている資本効率にメスが入り始めていることを好感し、海外のロングオンリーの大投資家もまた、日本株のウェイトを引き上げている。

以上のように、公的、個人、海外という3つの主体が、日本株に買い圧力を与えていることが、最近の株高の正体である。私も今回のコーポレートガバナンス・コードの策定には、その素案作成の段階から協力をしてきた。だが、客観的に見るとそれは壮大なシナリオの中の一つのパーツにすぎない。アベノミクスでは、持ち得る限りの施策が総動員され、日本株へ資金を呼び込むような仕掛けとなっていることに、あらためて気づかされる。
[ 2015/03/14 18:00 ] 経済社会 | コメント(15)
筆者紹介

check 小松原 周 (あまね);

ファンドマネージャー・アナリスト。日本株(東京)や米国株(ウォール街)の経験が長く、取材した会社は5,000社を超える。徹底したリサーチと業績予想に基づき投資判断を行うファンダメンタリスト。

*ブログ記事は、どのような場合であっても個別銘柄の投資判断に関して述べることはありません。

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