仙人の祈り

(アゴラ出稿)デカップリングする米国経済と企業の経営戦略

皆さんこんにちは。本日のニューヨークは風と雨が強く吹き荒んでいます。

アゴラへ出稿致しました。

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欧州や中国などの主要国に加えて、ブラジルやオーストラリアのような資源国においても、足元で経済成長率に減速感が見られ始めているが、その一方で、米国経済は比較的堅調さを保っている。リーマンショック後の景気回復局面で一時期話題となった「デカップリング論」は、そもそも新興国経済は先進国と経済的な繋がりが少なく、回復スピードが異なるというものであったが、現在では米国経済とその他の国がデカップリングをしている状況である。

以下は各国の経済活動の実体を反映する代表的な指標のひとつであるPMI (購買担当者へのアンケート調査)の推移を示したものである。確かにリーマンショック直後は震源地である米国の落ち込みが最も激しく、一方で中国やブラジルなどの落ち込みは比較的小さかった。しかし直近2年程を見ると、米国が最も力強い伸びを示しており、好況・不況の分水嶺とされる50 を実に32ヶ月連続で上回っている。もちろんこれらは株価にもすでに織り込まれていることである。

PMI20120421.jpg

このような米国経済の堅調さの背景には様々な要因が考えられる。度重なる金融緩和とドル安が輸出系企業の対外競争力を支えていることや、シェールガスの開発によって米国工業部門のエネルギー消費の約4 割を占める天然ガスの国内価格が大幅下落していること、或いは労働市場が他国よりも柔軟なため、企業が固定費を下げて筋肉質になっていることなどが考えられる。ただ、米国でアナリスト/ファンドマネージャーとして米国企業と対話をしている私自身がここで強調したいことは、米国企業の好調さの根本的な要因は、このような外部要因による恩恵だけではなく、個社の明確な経営戦略にあるということである。

米国も日本程ではないが、国内市場は成熟しているため、多くの企業は成長を海外へ求めている。ただ、日本企業と異なるポイントは、国内市場が度重なるM&Aによって業界内での寡占が進んでおり、生き残った企業がそのリソースを海外展開へ集中させることが出来ているということである。S&P500採用企業を一つの会社として見た場合、海外の売上比率は42%、設備投資は35%、新規雇用は36%、そして収益は実に43%を占めており、この比率は過去10年右肩上がりを続けている。

ここで、海外への依存が高まることと、冒頭の米国経済がデカップリングすることは相反するように聞こえるが、実はそうではない。もうひとつのポイントは、彼らはブランド戦略と生産を完全に分断して思考する習慣があり、つまり頭脳となる部分と労働集約的な部分を切り離して考え、それぞれが最高のパフォーマンスが出るように事業を展開しているため、世界経済が同時にリセッションに陥るような事態とならない限りは、狩猟民族のように、常に比較優位に立てる環境を世界地図上に探し出し、そして実践する行動力と資金を持っているということである。

日本企業が「グローカル」という言葉を使い始めて久しいが、それは生産と販売のローカル化をのみ意味していることが多く、米国企業のようにブランド戦略・マーケティングと生産のそれぞれを別個にローカル化させるような発想を持っていないように感じられる。特にこの差は物理的な制約の大きいエネルギーやマテリアル産業よりも、ITや消費系企業において明確にあらわれている。例えば、多くの米国のアパレル製造小売の企業が、すでに大部分のリソースを中国へ向けていることに比して、日本の同業界は完全に出遅れてしまっている。生産地としての中国の人件費が高騰していることから、「製造コストが上がっているのではないか」と、某アパレル企業へ聞くと、「中国での生産は今年度中にすべて撤退する予定である」と回答する企業があるのである。

米国経済は住宅バブル崩壊により家計へのダメージが大きく、過去の景気回復局面と比べてもその回復ペースが緩慢であることは事実である。しかし企業単位では、経営のスピード感と明確なビジョンは健在であり、引き続き世界市場の中でのその地位は揺るぎのないものとなっている。日本企業に再び資本市場の資金を呼び込むには、国内予選の簡略化と、世界大会で勝ち進めるだけの明確な経営戦略が必要なのではないだろうか。


アナリスト/ファンドマネージャー
小松原 周(あまね)
[ 2012/04/23 10:55 ] 投資全般 | コメント(0)
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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