仙人の祈り

シャープは倒産する - 先の読めない経営者たち

「シャープは倒産する」と5年程前に発言した時は、同僚でさえあまり信じていなかった記憶がありますが、今ようやくそれが現実味を帯びて来ました。

液晶は今後どんどん世の中から消えてなくなり、OLED(有機EL)に置き換わります。私は何故シャープがOLEDの開発を行っていないのか、疑問でなりませんでしたが、恐らくは日の丸ジャパン連合で部材から最終製品から完結している液晶に過信をしていたのでしょう。明らかに経営者の判断ミスでした。

ちなみにOLEDの量産を行えるのは、サムソン、LG、日系では住友化学がもしかしたら可能となります。日本の化学企業はこれまで液晶の部材を売り潤ってきましたが、それもどんどんなくなっていきます。

クラレの“ポバールフィルム”、ダイセル化学の“TACフィルム”、それらを貼り合わせてつくる日東電工の“偏向フィルム”の他、複雑な構造のほぼすべての液晶部材は日系化学企業が世界シェアを独占していますが、これがすべてなくなってしまいます。最新鋭の安川の多軸ロボットを自慢していた"世界の亀山"は、一度も世界から振り向かれることなく終わるでしょう。

サムソンが液晶に参入しなかったのは、液晶は部材が多く、最終メーカーに利益が残りづらい製品であると分かっていたからです。それよりも、モニターの最終進化系であるOLEDの研究を行った方が良いと判断し、何年も前から莫大な研究開発費を計上し、今や量産体制を確立しています。OLEDは部材が少なく、究極的には新聞紙のように印刷技術で作れる可能性があるため、量産をすると莫大な効率化のメリットが得られます。

OLEDの時代になった時、サムスンとLGは値段を下げずに、十分な利益が取れる水準でしか販売してくれないでしょう。デバイスでライバルとなっているアップルや日系電気メーカーにOLEDを売らなければ、ほぼすべてのデバイスで世界の覇者となることが確定します。そこまで見据えて彼らは事業を展開しているのです。

OLEDの開発を行っていなかった日本勢の本当の苦しみは今始まったばかりです。融資を受けて延命しても、エルピーダのようにいくらお金を援助しても復活せず、多くの化学メーカー、素材メーカーを道連れに、潰れていくでしょう。円高が競争力の減退の主因と考えるのは本質的に誤りがあります。消費者が求めているものを創っていれば、高くても買ってくれます。

私は数え切れない程の日本の経営者と話をしてきましたが、日本では今でも多くの企業が技術力の高さが競争力につながると勘違いしているところが多く、ゲームのルールが変わっていることに気付いていません。そしてクリエイティブなアイディアを持つ会社にオセロのようにシェアをひっくり返されているのです。

何とも憂鬱になる話です。
[ 2012/08/24 06:33 ] 雑感 | コメント(0)
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筆者紹介

check 小松原 周 (あまね);

ファンドマネージャー・アナリスト。日本株(東京)や米国株(ウォール街)の経験が長く、取材した会社は5,000社を超える。徹底したリサーチと業績予想に基づき投資判断を行うファンダメンタリスト。

*ブログ記事は、どのような場合であっても個別銘柄の投資判断に関して述べることはありません。

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