仙人の祈り

米国大統領選の行方 - 「CEO」と「Professor」のディベート始末(和訳)

▼「CEO」と「Professor」のディベート始末

10月3日夜、コロラド州デンバー大学で行われた、オバマ大統領とロムニー共和党大統領候補の最初のディベートは、オバマ大統領の完敗に終わった。

大統領もロムニー氏も相手にノックアウトパンチを浴びせなかったし、大きな失態も演じなかったが、ロムニー氏の優勢勝ちはかなりはっきりしていた。ディベート直後のCNNテレビ調査で「ロムニー氏勝利」の回答は67%に達している。

ディベート終了後、オバマ、ロムニー両氏の討論会におけるパフォーマンスのメ
ディア論評によく使われた言葉はロムニー氏についてはenergetic, fluent, sharp, assertive,などである一方、オバマ氏に関してはpassive, dull, detached, disengaged, defensive,などである。
▼大統領政策を容赦なく攻撃

ロムニー氏は90分間の討論を通じ終始「攻撃モード」であった。大統領への個人攻撃は行わず、オバマノミクスを容赦なく叩いた。同氏の経済再建策は未だに具体性に欠けたが、簡潔、明快な内容で、歯切れ良く、立て板に水の話し方は説得力を持ち、強い自信と政策通の印象を与え信頼感を醸成した。司会者の注意を再三遮って発言を続けたが強引さをほとんど感じさせず、むしろ自信に満ちた指導者像を印象付けた。

ロムニー氏は大統領の発言中メモを取るため視線を落とす以外は大統領の目を見て話し、聞いたが、大統領は同氏の応答中はほとんど顔を上げず、自分が発言中も同氏と視線をあまりあわさなかったから好対照の態度で、ロムニー氏は大統領より「大統領
らしい」風格を見せた。また討論会当日はオバマ夫妻の結婚20周年で、ロムニー氏は冒頭、質問に答える前に夫妻を祝した後「結婚記念日を祝うのに私との討論会場程ロマンチックな場所はないでしょう」と冗談を飛ばし、討論中もユーモアのセンスを覗かせた。討論を通じてロムニー氏のパフォーマンスは経営会議を仕切るCEOを想起させた。

ロムニー氏の側近は同氏が発言すべきポイントを記したリストを周到に用意し、頭に入れて討論会に臨んだことを明らかにしている。この「発言リスト」は保守層を中心に
共和党支持者の票固めを主眼に作成されており、討論会でアグレッシブな攻勢に打って
出た戦略目的を示している。「リスト」には得点を稼いだ発言がいくつか含まれる。

▼「Mission accomplished」

舞台後方に映し出されていた米憲法の条文を指差しながら「政府の役割は国民
のlife & freedomを守り、個人が各人の夢を追求できる情報、環境を提供することだ」と述べたくだり、総括の辞で「今年の大統領選挙では米国の進路が問われる」として大統領との対立軸を明確に打ち出したり、最後に「軍事費はカットしない。強い米国を維持する」と保守層に向けたメッセージを盛り込んだこと、さらに「州議会議員の87%が民主党というマサチューセッツ州知事として超党派政治を心がけ医療保険制度改革等を成し遂げたバイパルチザン実績」を誇示した点等である。

さらにロムニー氏のややしゃがれた声で力強く、明瞭に語る話法はレーガン元大
統領の話し方を彷彿とさせ、保守受けを誘うものがあった。ロムニー氏の側近はディベート終了直後、ABCテレビ記者に「mission accomplished」と寸評したが、ロムニー氏の
ディベート戦略が奏功したことを一言で解説している。

▼「守勢でuncomfortable」
一方オバマ大統領のパフォーマンスの弱さは側近やオバマ支持者にショックを与えた。応答は解説調で冗長、言葉につかえることが多く、政権2期目の政策ビジョンにも触れなかった。大統領は2分の発言時間を過ぎ司会者から何度も注意を受けたし、上記
の通りロムニー氏とろくに視線を合わさず、作り笑いが目につき、終始「uncomfortable」な様子だった。オバマ氏はかねて「ディベート下手」と言われてきたが、それを実証したとされている。

特にオバマ大統領は常に守勢で、執拗に大統領を攻め立てたロムニー氏との差
が際立った。政策面での批判もロムニー氏は「具体的な中身を示そうとしない」と数回批判しただけで、「オバマ大統領を支持する国民の47%を無視する」としたロムニー氏の発言や投資会社ベイン・キャピタル経営時代の「非人間的言動」を持ち出して同氏を攻撃することもなかった。

今回大統領がロムニー氏を攻撃しなかった理由については、今年の大統領選挙は史上最悪の個人攻撃、ネガティブキャンペーン(現職のオバマ大統領が連日ロムニー
氏を名指しで批判する選挙運動は異例)が批判を浴びており、好感度でロムニー氏を
リードしている大統領はロムニー攻撃を控えて「大統領らしさ」を示し、ディベート巧者のロムニー氏の攻勢をかわそうとしたためとされている。失点を避け「presidential」に見せることで討論会を乗り切ろうとした。そのため勢い受け身になり、しかも今回初めて採用された2分内に返答という討論会形式が「プロフェッサー・オバマ」にはなじまず迫力を欠くパフォーマンスになった。
[ 2012/10/12 23:00 ] 経済社会 | コメント(0)
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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