仙人の祈り

QE3は本当に効果があるのか

QE3発表後、株価は軟調な展開となっているが、QE3の効果について懐疑的、批判的な見方を今回まとめてみた。

1) 失業率の高止まりや成長率の低下が構造的なものなのか循環的なものなのかといった議論は以前からされていた。失業率の高止まりが産業構造の変化などによる構造的要因によるものが大きい場合は、金融政策にて総需要を刺激しても失業率を低下させる余地は限定的となる。むしろ過度な金融緩和がインフレリスクを高めることにつながってしまう。

2) 過剰債務を抱えた経済主体は、金融緩和が実施されても、債務を適正水準に戻すことを最優先するため、新たな借入を行ったり、支出を増やそうとする動きは弱くなる。現在の米国では、依然として家計がバランスシート調整中であることを考えると、QE3を通じた消費刺激効果は限られてくる可能性がある。

3) QEを通じて発生する余剰マネーが、インフレやバブルを引き起こすとの意見もある。実際、過去実施されたQEでは、中国など新興国、特に固定的な為替レート制の国々のインフレやバブルの一因となったとも言われている。加えて、原油価格上昇に伴うガソリン高が、米国の企業収益や中低所得者層の消費を圧迫したという批判もある。
4) 過去のQEが実施された時期に当たる2009年初めには米国再生・再投資法が成立、2010年末には給与減税と長期失業保険給付の延長が実施されるなど、財政刺激策が打ち出されており、これらが経済を押し上げたという意見もある。今回はむしろ逆に年末に期限を控えている「Fiscal Cliff」が米国景気を下押しするのではという懸念もある中では、過去のQEと同様な効果を得るのは難しい。

5) 住宅市場に与える影響については、住宅購入者が享受できる効果は限定的との批判もある。金融機関の調達金利に相当する住宅ローン担保証券の市中利回りはQE3発表を受けて過去最低水準に低下した。一方で、規制強化や事務処理能力の限界などを理由に銀行の住宅ローン貸出基準は厳格な状態にあり、借手への提示金利の低下が限定的となる可能性が指摘されている。

<まとめ>

バーナンキ自身も、金融政策は万能ではなく、これだけで問題を解決することは不可能であり、政策担当者が他の分野で役割を果たすことを期待するとも述べている。これらのことからも、QE3による市場参加者のセンチメント改善は従来ほど期待できず、ポートフォリオ・リバランス効果による株式などの金融資産価格の上昇は限定的に留まる可能性があり、この場合には景気を押し上げる効果も限られてしまう可能性があることには留意しておきたい。

Ceronでの記事はこちら
[ 2012/10/26 02:56 ] 投資全般 | コメント(1)
Re: はじめまして
こんにちは。応援コメントありがとうございます。大変励みになります。

現在久々に日本へ帰国しています。
[ 2012/10/28 14:44 ] [ 編集 ]
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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