仙人の祈り

日本企業の賢い生き延び方 - 米国メジャーとトモダチ作戦

日本では楽天や凸版印刷が独自のEリーダーを販売し、本気で電子書籍業界で食べて行くことを考えているようだ(少なくとも三木谷氏の公式見解ではそうだ)。会社は2年でこの事業を黒字化させる予定だそうだが、関係者は本当に気の毒だと思う。

楽天のKoboはユーザービリティ、インターフェースがガラパゴス化しており、とても世界戦略まで見据えて開発していたとは思えない。日本の消費者も十分にそれを理解しているので、Koboは完全無視して、KindleやKindle fire HDが上陸するのを待っている状態である。会社も本音ではそれが分かっているのであろう、在庫処分損を出すよりましなので、会員に無料でKoboを配り始めている。切ない話だ。

iPhoneでネットに繋いで、Googleで検索し、Amazonで買い物し、VIZAやPaypalで決済する、そんな日本の消費者が増えてきているはずだ。もちろん、ガラケーでネットに繋いで、Yahoo Japanで検索し、楽天で買い物をし、郵便局の代引きで決済する人もいるかも知れないが、やがてこの人たちはガラパゴスであっても淘汰される。

ここで注目すべきは、一連の流れの中で決済まではすべて米国企業で、日本企業が絡んでいるのは最後の宅配しかないということだ。ホワイトカラーの米国企業は仕組みやプラットホームを提供し、残った労働集約型の仕事は現地のブルーカラーにくれてやる。頭脳と資本のレバレッジを効かせ、圧倒的なスピードと、収益性を実現させ競合を突き放すのが、彼らの勝利の方程式だ。

「楽天とAmazonのどちらが日本で勝つか」という議論は、あまりされることはないだろう。楽天はEコマースも、電子書籍も、百歩遅れてAmazonのビジネスモデルをパクり、その劣化版を日本で展開しているだけの会社である。本家が日本での展開を本格化してきている今、模倣企業が勝てるわけがない。

AmazonはすでにSonyも、バーンズ&ノベルも降し、電子書籍の覇者となっているにもかかわらず、何故に彼らはAmazonに勝てると判断したのだろうか?Amazonが現在展開している戦略とその意図、そして最終目標までの道のりに関してはここに書いたが(関連記事: ビット経済の新ルール)、Amazonの思慮遠大な戦略の表面しか読めていない楽天は、今後本業でも足元をすくわれることになるだろう。

私の考えでは、日本企業の賢いやり方は、米国企業のプラットホームに一番に乗ることである。日本人の強みは総論ではなく、そこに乗る各論・コンテンツにある。漫画の著作権は譲らないとAmazonへの拒絶反応をするのではなく、むしろ彼らに漫画を世界でもっと売りましょうと営業をするべきではないだろうか。

米国企業には日本人がどうして独創的で美しい世界観のコンテンツを次々に生み出せるのかが理解できない。米国人はスタイリッシュな美は得意だが、雑然としたパーツから調和を生み出すような美では日本人には敵わない。つまり、何も同じビジネスモデルで後追いして、後で潰されるくらいなら、最初からトモダチになって、お互いが相互補完できるようなことを模索していった方がよい。
[ 2012/11/11 22:14 ] 経済社会 | コメント(3)
反論
・寡占状態に到達するまでプラットフォーム化を推し進めて初めて実現される効用は、コンテンツ価格決定権と、コンテンツ製作者に課す手数料の決定権ですが、コンテンツアクセス数が稼げるようになった時に、利益をコンテンツ製作者に還元のではなく、プラットフォーム会社の株主に回すようであれば、コンテンツ製作者は収支が合わないのではありませんか?
・プラットフォームに乗り、価格決定権を手放すことによる収入減分が、コンテンツ流通量が増えることによる収入増加分で相殺されるという暗黙の前提を置いていませんか?
・一曲あたりの価格が統一されたiTunesの導入前後で音楽コンテンツ製作者と関連業界の人達の収入は相当減ったはずです。良曲自体が減った事、音楽以外のエンターテインメントの選択肢が増えた事、違法コピー等による影響と峻別するのが難しそうですが。
[ 2013/09/22 23:07 ] [ 編集 ]
Re: 反論
> ・寡占状態に到達するまでプラットフォーム化を推し進めて初めて実現される効用は、コンテンツ価格決定権と、コンテンツ製作者に課す手数料の決定権ですが、コンテンツアクセス数が稼げるようになった時に、利益をコンテンツ製作者に還元のではなく、プラットフォーム会社の株主に回すようであれば、コンテンツ製作者は収支が合わないのではありませんか?

コンテンツというのは人件費を投じれば良いものができるわけではありません。コンテンツ会社の収支がそれにより必ずしも悪化するとは言えないでしょう。

> ・プラットフォームに乗り、価格決定権を手放すことによる収入減分が、コンテンツ流通量が増えることによる収入増加分で相殺されるという暗黙の前提を置いていませんか?

特に考えていないです。コンテンツは価格の弾性値が低いです。

> ・一曲あたりの価格が統一されたiTunesの導入前後で音楽コンテンツ製作者と関連業界の人達の収入は相当減ったはずです。良曲自体が減った事、音楽以外のエンターテインメントの選択肢が増えた事、違法コピー等による影響と峻別するのが難しそうですが。

AppleやGoogleのプラットホームが違法コピーを載せることなどあり得ません。
[ 2013/09/24 22:11 ] [ 編集 ]
Re[2]: 反論
 プラットフォーム会社を活用することでコンテンツ制作に注力したい会社が、[むしろ彼らに漫画を世界でもっと売りましょう]と、営業レバレッジ効果を期待できれば良いと思います。しかし、プラットフォーム化可能な事業は規模の経済が働く点を含め、独占を生む前提条件の多くを満たす形態です。よって、競争環境下ではコンテンツ製作者を含むエコシステムの発展に尽力した会社が、寡占状態に至ると自社利益追求に切り替わる事例には事欠かず、期待内容が希望的観測のように見えたので、久しぶりに投稿をしてみました。

> コンテンツというのは人件費を投じれば良いものができるわけではありません。コンテンツ会社の収支がそれにより必ずしも悪化するとは言えないでしょう。
 コンテンツのクオリティは第一には天才度に依存するため、人件費との直接的な相関は無いという意味で同意します。しかし、天才が業界に現れる確率を上げようと思うと、大成功した時の期待リターンの大きさが明らかである事と、定常的に循環する資本の絶対量が大きく、結果として製作者の母集合が十分に大きくなることが、必要条件であると思います。(この主張の因果関係を論理演繹的に示すのは難しそうなので、一仮説と解釈して下さい。)
 価格決定権を手放して単一コンテンツ価格を固定されてしまうと、良作が出た時の期待収益が抑制され、駄作であった時の期待損益が手数料分だけ悪化するので、第一の必要条件を損なう要因です。また、寡占状態に到達したプラットフォーム会社が自社利益の都合を優先して、良作の販売価格の上限がプラットフォーム基準価格の影響を受けるという予想が成立するならば、第二の必要条件を損なう要因であり、併せると悪化要因です。

>> ・プラットフォームに乗り、価格決定権を手放すことによる収入減分が、コンテンツ流通量が増えることによる収入増加分で相殺されるという暗黙の前提を置いていませんか?
> 特に考えていないです。コンテンツは価格の弾性値が低いです。
 掲示板での議論は難しいですね。暗黙の内に設定している前提条件を整理する必要がありそうに思いました。
・(コンテンツの一例と理解している)映画の価格弾力性は、他の支出項目に比べて高い事を御存知と思いますので、漫画・書籍は、映画、とは異なる価格弾力性であるという事でしょうか?
・元々の論点は価格弾力性ではなく、前記の営業レバレッジ効果=[コンテンツ流通量が増えることによる収入増加]という希望的観測のために価格決定権を手放すという経営判断の評価にありました。特に前述の通り成功時の期待収益と、コンテンツ業界を循環する資本量が、現在の開放市場が持つ価格決定の仕組みでなく、プラットフォーム会社の基準価格に影響され、それは悪化要因ではないかという問題提起です。
#前提条件群を共有していない中で議論するのは難しいですが、視点の偏向が無いことを示す為に、私はコンテンツ製作者業界からは程遠く、別種のプラットフォーム的組織における技術分野の人であるとだけ記しておきます。長文御容赦。
[ 2013/09/28 17:49 ] [ 編集 ]
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筆者紹介

check 小松原 周 (あまね);

ファンドマネージャー・アナリスト。日本株(東京)や米国株(ウォール街)の経験が長く、取材した会社は5,000社を超える。徹底したリサーチと業績予想に基づき投資判断を行うファンダメンタリスト。

*ブログ記事は、どのような場合であっても個別銘柄の投資判断に関して述べることはありません。

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