仙人の祈り

アマゾンに怯える大手出版社 - 電子書籍のカルテルは違法行為

2007年11月、北米でキンドルを始めたアマゾンは開始時に9万点の書籍を揃え、現在では140万点以上を販売し、そのほとんどを紙の書籍価格よりも3-4割安く販売している。競合として戦いを挑んだソニーは一瞬にして敗れ去り、途中参戦した大手書店のバーンズ&ノベルも返り討ちにされた。

そして5年の歳月を経て、ついにキンドルの日本上陸が発表された。準備に相当な時間をかけただけに期待感も膨らんでいたが、11月25日、日本版キンドルの全貌が明らかとなると消費者はガッカリした。タイトル数は5万しかなく、価格も書店で並ぶ本と大きく変わらなかったからだ。

ソニーの「リーダーストア」の品揃えは約6万8000点、楽天の「コボストア」は約6万5000点、紀伊國屋書店の「ブックウェブ」は約5万9000点で、どこで買っても価格は同じである。アマゾンらしさがまったく見られない。

ereader111.jpgこの理由は日本の出版業界の「再販制」という悪しき商習慣に起因する。再販制というのは言葉を変えれば、出版社が決めた価格以外で本が取引されることを禁止する価格カルテルである。

アマゾンが米国で圧倒的な販売量と低価格を有するのは、すべての販売権をアマゾンが保有する卸売りモデルであるためだ。ところが国内出版勢は、再販制が崩れてしまうことを恐れ、アマゾンに寝返らないように事前に申し合わせをしていた。
資本主義の日本にあって、価格カルテルは公取法違反の重罪であるが、今でも出版業界やタバコだけはこれが法律で認められている(化粧品と医薬品の適用は97年に廃止された)。恐らく、政治家も、自分の周囲を週刊誌などに嗅ぎ回られたくないので、出版社に対して物言いが出来ないのであろう。

減収減益が続いているにもかかわらず、御三家の社員の給料は高止ましている。アマゾンの上陸が差し迫るとカルテルを結び、政治家には海外ダウンロードコンテンツに税金を掛けるように訴える。消費者の利便性を無視し、自らの既得権益を守ることばかりに専念してきた彼らは、日本経済を代表する醜悪の一つである。

ただし、このようなことが現代で許される道理はない。電子書籍に関しては法律でも何も定義されておらず、現在行っている出版業界が行っているカルテルは明らかに違法行為である。

アマゾンは中小の出版社に密約を破って、自分たちと卸売モデルの契約をするように説得を続ける。出版業界は角川を除く、すべての会社が減収減益で苦しんでおり、そのうちの一社が寝返るのは時間の問題だろう。

実際、新潮社などは、「実験的に」ということで、すでに投資コストが回収されている旧作で値下げを始めている。"深夜特急"は400円の販売価格を半額の200円にしたところ、売り上げが急増した。

また、北米ではクーポンサイトという割引コードを配っているサイトがある。アマゾンやカナダの会社を買収した楽天は、実際にこれを本に適用しており、「thankyou2012」と打つと表示価格より35%引きで本が買える。表立ってアマゾン陣営へ行けない中小の出版社が、このクーポンコードでの割引を適用し、実質値下げに応じ始めている。

CEOのジェフ・ベゾスは、再販制を廃止するよう、日本政府に訴え続けている。書籍・雑誌・新聞・CDが、再販制で守られているのは世界で日本だけである。昨今のネット化・電子化の流れによって、ようやくそれらの膿を追い出す時がやって来た。日本の出版業界の夜明けは近い。
[ 2012/12/15 18:00 ] 経済社会 | コメント(0)
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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