仙人の祈り

明治大学の経営戦略 - バンカラからハイカラへの道

この10年で最も経営的な成功を収めた大学は明治大学である。

明大の受験者数は今や日本でトップとなっている。合格倍率の上昇によって、必然的に偏差値も上昇傾向にあり、そして偏差値が上昇することで、ブランド力が更に向上するという好循環が生まれている。

さて、そもそも明治がこのような集客力を得るようになったのは何故だろうか?それは、大学側の大幅な構造改革とブランド戦略の勝利によるものである。

北川景子 明治大学大学全入時代を迎え、日本では大学が「受験生に選ばれる」時代に移行している。大学の顧客である18歳の人口は1992年の205万人をピークに、2011年には120万人と約4割も減少している。

一方で、その間に進んだ規制緩和により、大学数も同期間で250校以上も増えている。このため、大学間における学生獲得競争は激化しており、「定員割れ」の私大は4割に達している状況だ。

このような状況の中で、明治大学は東京6大学という知名度に甘んじることなく、いち早く集客力を高めるための戦略を思案し、これを実行してきた。代表的なものでは以下のようなものがある。

1. リバティータワーの建設

駿河台の伝統ある旧校舎を取り壊し、98年に近代的な「リバティータワー」を竣工した。綺麗で近代的なビルによって、古臭くて男臭いイメージを払拭した。

2. 特命教授の任命

地方のキーとなる高校教師を探し出し、明治大学「特命教授」という肩書きを授与した。実際には何ら経済的なベネフィットがある訳ではないが、地方の高校教師に教授という肩書きを与えて、明治大学の素晴らしさを生徒に布教してもらうということを、組織立てて行った。
3. 有名人の在学生を使用したイメージ戦略

井上真央、北川景子、向井理など、若者に支持のあるオシャレな芸能人を支援して、積極的にメディアで明治の学生であることをアピールしてもらった。大学の雇った広報部隊が、雑誌やテレビ局へ企画営業をし続け、若者に華やかなイメージを植え付けることに専念をした。

4. 学部とカリキュラムの充実

これまでの伝統にこだわらず、時代のニーズに合わせた学部とカリキュラムに大胆に変更した。教授会のような古い意思決定システムを弱体化させ、実務を行っている優秀なビジネスマンを講師として招き、ユニークで実用性の高い授業を増やしていった。

5. 就職支援

教務課の人員を増強し、在学生の就職支援を積極的に行った。学生には早い段階から就職相談と、対策を指導した。それが奏功し、就職率は年々上昇しており、企業の採用側からも「もっとも"使える"大学ランキング」で一位を獲得するようになった。

これらをコンパクトにまとめると、

・建物に設備投資(ハードの刷新)
・口コミやメディア戦略によってブランド価値を向上(ソフトの改変)
・授業内容の充実や就職支援によって顧客満足度の向上(サービスの向上)

と言うことができる。つまりは、大学名は残したまま、中身は総取っ替えしたわけである。

中高年の人にとって、明治と言えばバンカラというイメージであろうが、今や若者にとっての明治は都会的でオシャレな大学として認知されている。この世代間の認識ギャップに、大学側の戦略的な成功が見て取れる。

変革の原動力となったものは、早慶の滑り止めというポジションに固定されてしまった大学側の危機感にある。ただ、そのスピードと成果を重視した戦略は賞賛に値する。明治大学は継続的な受験生と寄付金の増加によって、大手で唯一の増収増益を維持する私大となっている。

企業も抜本的な改革の好例として、この事例からまだまだ学べることが多そうだ。
[ 2012/12/31 18:00 ] 投資全般 | コメント(0)
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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