仙人の祈り

グレート・ダイバージェンスの終焉 - 国を豊かにする6つのアプリ

人類はこれまで累計1,060億人が誕生し、現在その6%が地球上で生活している。そしてそのうちの60%がアジアに住み、多くがとても貧困で寿命が短い。

東洋世界1京6,000兆円相当の富が存在するが、この大部分が西暦1,800年以降に生み出され、そしてその2/3を欧米人が保有する。

経済学者はこれをグレート・ダイバージェンス(大いなる格差)と呼ぶ。

西暦2,000年の時点で、イギリス人はインド人の10倍の富を持ち、アメリカ人は中国人の20倍の富を持つ 。西暦1,500年頃はその逆で、インド人や中国人の方が欧州人よりも遥かに裕福であった。

さて、何故、西洋は東洋にこうも差をつけたのであろうか?
帝国主義が欧米諸国を強くしたと考える学者がいるが、これは間違いである。帝国主義であれば、それこそ中国やイスラム圏の国々の方が歴史がある。

地理的な条件や、資源の有無と考える学者もいるが、それも関係ない。東ドイツはトラバントを開発した一方で、西ドイツはベンツを開発した。朝鮮半島の違いは今更言うまでもない。

このような歴史的な実験や考察がなされる前から、すべての答えを述べている人物がいた。「国富論」の著者、アダム・スミスである。彼は国が富むためには、以下の6つが必ず必要であると説く。

1. 競争

ロンドンには会社の原型となる組織が多数存在したが、中国には皇帝と官僚の支配が中心であった。

2. 科学的革命

西洋にはニュートンなどの天才による科学的な大発見があり、またそれを応用する学者がいた。ベンジャミン・ロビンはニュートン物理学を応用し正確な砲術を開発したが、東洋ではこのような進歩は見られなかった。

3. 財産権

個人が土地や財産を保有することを認めるかどうかで、北アメリカは南アメリカと戦争をして、北アメリカが勝利した。一方で南米ではコンキスタドールの末裔しか土地の所有が認められていなかった。

4. 医学

19世紀以降、西洋医学は発展し、人間の寿命を飛躍的に延ばした。セネガルでは20世紀初頭に公衆衛生を高める施策を行い、平均寿命が20歳も伸びた。

5. 消費者集団

産業革命が起きても、製品を買う集団がいなくては発展しない。西洋以外では日本で初めて消費者集団が誕生し、自分の買いたい物を買うという欲求が満たされた。

6. 労働倫理

マックス・ヴェーバーはプロテスタントに特有のものと誤解をしていたが(プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神)、労働が報われる制度があれば、どこにでも労働倫理は生まれる。平均的な韓国人はドイツ人よりも1,000時間多く働く。

ところで、冒頭に述べた西洋と東洋のグレート・ダイバージェンスは今、かつてないスピードで縮小へ向かっている。

iPhoneは米国人がつくったものだが、iPhoneに使われている特許は日本が24万件保有し、世界第二位のアメリカの15万件を圧倒する。中国はまだ数万件しかないが、それでもドイツよりも多い。

東洋が急速に西洋との差を埋めてきている理由は、これらの6つのキラーアプリがオープンソースであることが大きい。まるでスマホでアプリをダウンロードするかのごとく、東洋の国々はお手軽に国富論の6つの条件を組み込み、1,500年から付けた差を埋めてしまったのである。

2,000年時点で中国人より20倍豊かであったアメリカ人は、今では5倍、中国が世界一のGDPとなる2016年には2.5倍まで縮小する予定である。

差を埋められた西洋が今後どのような道を歩むのかは、歴史もないため誰にも分からない。財政規律と労働倫理はすでに弱体化しているが、その他のすべてのアプリが動かなくなる程の致命的な欠陥となるかどうかは断言できない。

ひとつ言えることは、我々はグレート・ダイバージェンスが終わる時代に生きている、ということである。
[ 2013/01/12 18:00 ] 経済社会 | コメント(0)
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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