仙人の祈り

買ってはいけない!! - 買収防衛策を導入するゾンビ企業

買収防衛策という株主価値を毀損するだけの愚策を採用する日本の上場企業は多い。

買収防衛策が日本で流行したキッカケは、2005年の村上ファンドに始まるニッポン放送の支配権争いであった。経営者たちは敵対的な買収者から自身を守ることに躍起となり、こぞって導入を決議した。

ハゲタカファンドところが、リーマンショックによってハゲタカファンドは相次いで倒産し、その脅威は低下した。それにも係わらず、現在でも買収防衛策を導入している上場企業は519社もあり、2005年の頃から少しも減っていない。

買収防衛策というものが、如何に馬鹿げたものであるかを論じるために、一般的に導入されているライツプラン型の買収防衛策とはどのようなものであるのか、例を述べたい。

1. 買収者はまず「これから御社を買収します。何故ならこのような経済的ベネフィットがあるからです」と、"事前に"書面で通知する。

2. 会社は書面を受け取った後、"会社と利害関係のない"「第三者委員会」へ買収提案の審議を依頼する。

3. 第三者委員会は60日以内に買収提案が既存の株主にとってメリットがあるものかどうかを審議し、会社の取締役会へ勧告する。

4. 取締役会は原則、第三者委員会の勧告に従う。第三者委員会の勧告が「この買収提案は拒否すべし」であった場合、買収防衛策の発動を買収者に宣言する。

5. それにも係わらず、本当に買収を仕掛けて来た場合、取締役会は新株発行券を既存株主に配り、自社株を無制限に希薄化させることで、いくら買収者が株を買い集めても持分を増やせないようにする。

(なお、買収者が1を守らず、突然買収を仕掛けて来た場合には、5へひとっ飛び出来る。)
さて、オーナー系同族企業の某D日本印刷の社長は、株主総会で買収防衛策を導入する議案を提出した。

議案は必ず可決されるので心配ない。何故なら、血族とその他の利害関係者で議決権の過半数を保有しているからだ。これで自分たちの地位を脅かす者はいなくなる。

もしも買収防衛策があるにも係わらず、買収を仕掛けて来る猛者が現れたらどうだろうか?

第三者委員会の勧告大丈夫。第三者委員会の委員は、自社の社外取締役や懇意にしている弁護士や大学教授ばかりだ。創業家に逆らえる者などいない、、、。

これは紛れもない実話である。

日本の多くの会社がPBRが1倍を下回っている。つまり、会社を買収して経営権の51%以上を取得し、会社を解散して保有資産を売れば、すぐに利益が出るということだ。

(もちろん厳密には負債を返済したり、簿価と同じ価格で資産を売り裁けないこともあるので、このようにならない場合もある。)

既存の株主からしたら、誰だって会社の解散を望むに決まっている。買収者は業績を悪化させた現経営陣をクビにして、万年割安のゾンビ企業の株式価値を上げてくれる、まさに救世主なのである。

買収防衛策というのは、このような機会を経営者の保身のために排除するということを意味する。第三者委員会に判断を委ねることで公平性を保っているように一見見られるが、その委員が全員経営者側の人間というオチであり、かなり悪質である。

ちなみに買収防衛策は80年代の米国で始まったものであるが、現在では導入している企業はほとんどない。日本は上場企業に対する世間の監視の目が甘く、このような投資家を蔑ろにしたような愚策がまかり通っているのである。

海外投資家から見れば、東京市場に魅力を感じないのは当然だろう。我々としても、買収防衛策を導入しているようなゾンビ会社の株を買うことは、極力避けた方がよい。
[ 2013/01/22 18:00 ] 投資全般 | コメント(6)
投資する側からみれば、アメリカ的な
発想の方が面白いし、会社のチカラも
グングン伸びると思います。
でも、日本は、先祖が作った会社を
自分の代で、他人や外国人に渡すのは
恥だと思う気持ちが強いんでしょうね。
開国を迫られているような、幕末を
連想しました。国民性かもしれませんね。
[ 2013/01/22 18:56 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
なるほど、自分の代で人に取られるのが恥という発想があるのかも知れませんね。血統を重んじる日本人にとっては重要ですね。

私の記事は、ある程度記事らしくする必要もあり、ちょっと意図的にバイアスをかけています。そういった偏った見方に対して、逆の視点をコメントを書いて頂けると、本当にありがたいですね。

コメントはどのようなものでも大歓迎ですので、どしどしお願いします。
[ 2013/01/22 21:12 ] [ 編集 ]
米国では殆どなくなったのですか
マスコミ的には日本企業は経営者の保身のために買収防衛策を導入することが多いと言われていますが、中には本当に既存株主を含めたステークホルダーの総合的な利益を考えて導入しているところも、極めて稀かもしれませんがあるかもしれないと思います。株主が合理的な判断が出来ると仮定するならば、株主の利益を重視する観点からは、買収防衛策は不要化とは思いますが・・・。
米国ではパックマンディフェンスやら焦土作戦やら色々な手段がとられていたと記憶していますが、買収防衛策が廃れた理由は、やはり株主利益を重視する観点によるものでしょうか。
[ 2013/01/24 12:05 ] [ 編集 ]
Re: 米国では殆どなくなったのですか
spriteaさん、コメントありがとうございます。

米国では80年代にいろいろあり、買収防衛策はむしろ判例でも合法という判断が出ており、日本よりも進んでいます。

ただ、米国市場は最も効率的な市場であり、経営者が買収を防衛するからには、相当な根拠を株主にしめさなければならないというスキームになっています(UNOCAL基準と言います)。よって高い値段で買ってくれる買収者を排除することはほとんど無理かと思います。

正確なデータは忘れましたが、毎年平均70社程が買収防衛策の廃止を総会で決議しています。
[ 2013/01/24 15:00 ] [ 編集 ]
そうですよね
まったく同意です。

[ 2013/01/26 18:03 ] [ 編集 ]
Re: そうですよね
仙人さん、コメントありがとうございます。

500社もあるので、多くのファンドがポートフォリオから完全に除外することはできないでしょうが、買収防衛策を導入している企業は出来るだけ買いたくないですよね。

[ 2013/01/26 18:56 ] [ 編集 ]
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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