仙人の祈り

規模と成果のパラドクス - 成功の秘訣は些細な工夫にあり

人間には組織が大きくなればなるほど、問題を解決するにあたって大袈裟な対策を取ろうとする傾向がある。

しかし行動経済学の世界では、与える力が大きいほど、期待する成果が得られなくなるというパラドクスが存在する。つまり矛盾しているのだ。

AOLとタイムワーナーが合併した当時、ネットとメディアの融合だとして”史上最大の取引”と報道された。しかしこの合併によって、米国人の生活は、何ひとつ変わることはなかった、、、。

実際に人の記憶に残り、何かしらのインパクトを与える効果のあることは、実はこの逆で、とっても些細なことであったりする。

ユーレイル欧州では約1兆円を投資してユーレイルの速度を上昇させたが、残念ながら乗客はまったく増えなかった。

恐らくは、その1/10くらいの投資で高級ワインの「シャトー・ぺトリュス」を乗客に配り、旅を満喫してもらった方が集客力は高まるはずだ。ワインを楽しむ乗客は「もっとゆっくり走って欲しい」と頼むに違いない。

ヴァージンの胡椒入れヴァージン・アトランティック航空のアッパークラスの塩胡椒入れセットの話は有名だ。気に入った乗客が手にとって眺めていると「私たちからお客様への贈り物です」と底の方に彫ってある。

何年か後に、どの飛行機に乗ろうかという選択を前にした時、その乗客はふっとこのエピソードを思い出す。そして再びヴァージンを選んでくれる可能性が上がる。

リドマーホテルストックホルムの高級ホテルであるリドマーホテル(LYDMAR Hotel)のエレベーターのボタンには、各階を指定する数字がない。代わりにFunk、Jazz、R&Bなどと記されており、押すとエレベーター用のBGMが変わる。

このちょっとした遊び心によって、宿泊客はリドマーホテルのことが強く印象に残る。大金を投じてありきたりな部屋を作るよりも、遥かに費用対効果の高いアイディアである。
シティバンク オンライン多額の広告費を投じたにも係わらずオンラインバンキングのシェアが取れずに悩んでいたシティバンクは、一人の若手のアイディアに従い、ログインした時の最初の画面に残高を表示させないようにした。

米国では残高を見たくないので、ATMを一切利用しない人がいるくらいである。残高が画面に表示されるリスクをなくしてあげただけで、利用者は最初の1年だけで5%も上昇した。

さて、皆さんは最大の組織である政府も含めて、大規模な組織が、我々にとって本当に重要なことを無視しているように感じることがないだろうか?

それは私の考えでは、気のせいではない。事実、多くの大きな組織というのは、我々とは関係のないところを掘ったり埋めたりしているだけなのだ。

新政権はやたらとお金を使いたがる。大規模な補正予算を組み、橋や道路を作りたがる。しかし、それが本当に我々の生活を良くするものであるかどうかは、疑わしいところだ。

冒頭に戻るが、人間にはもともと自己拡大傾向があり、重大な問題には、立派で、高価な解決策がつきものと考えがちだ。しかし、最新の行動経済学では、期待する成果というのは、金額や努力の度合いに比例するとは限らないとしている。

この考え方は、身近な組織でも当てはまることが多い。ダメな組織というのは、問題を解決する権限の持ち主が巨額の経費を所持している場合がほとんどだ。そしてこの手の人たちは、巨額な経費を浪費することが自分の仕事であると勘違いしているのである。

「組織の成功は年長者の決定に依存する」と社員に信じ込ませることで、給料の不釣り合いを正当化している。本当は会社の成功は些細なアイディアにあるなどということを認めるわけにはいかないのだ。

年齢序列の組織ほど弱体化している要因は、このような権力とお金と成果が、まったくの不均衡であるというパラドクスを無視していることにある。(過去記事: 日本をダメにしている「真の2極化」と「老害」

理想の組織とは、プロジェクトごとにリーダーがいて、それとは独立したチームが予算を管理しているような組織である。米国ではこのタイプの企業がたくさんあるが、残念ながら日本企業では名前が思い浮かばない。
[ 2013/01/26 18:00 ] 投資全般 | コメント(2)
非常にためになりました
駄目な組織の件を読んで最初に思いついたのが小沢政党でした。
[ 2013/01/26 22:09 ] [ 編集 ]
Re: 非常にためになりました
spriteaさん、コメントありがとうございます。

小沢さんという方が今一歩でいつもダメなのは、彼が奏でる音が何かしらの新しさに欠けるせいではないかな、と個人的には感じています。
[ 2013/01/26 23:26 ] [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

記事の募集
  • 社会全般や政治・経済に関して、記事の寄稿を募集しています。お名前、タイトル、本文を記載しこちらまでお送り下さい
お問合せ
  • 出版・メディア関係の方のお問い合わせはこちら

管理人(Macoちゃん)が責任をもって小松原氏へ転送致します
人気記事(当ブログ内)
記事検索