仙人の祈り

シェールガス革命のポテンシャル - 米国復権の鍵

米国のシェールガスの掘削技術は、米系のエネルギーメジャーやTI(テキサスインストゥルメント)などの一部のIT系企業と政府の間で、10年ほど前から秘密裏に研究開発が行われていた。

プロジェクトは国家のトップシークレットとして扱われ、技術者などの関係者は厳しい管理下に置かれていた。この背景は、技術流出を防ぐということに加え、掘削の副作用として地盤沈下や地震、毒液による環境汚染などの問題があり、技術が確立するまでは情報統制が必要であると政府が判断したためだ。

技術が確立した現在では開発の事実はすべて公になっており、我々もその全容を知ることができるようになった。そして知れば知るほどに、シェールガスはエネルギー業界の版図だけではなく、国家戦略そのものを覆すような革命であることがわかってきた。

まずはシェールガスの値段だ。1K
ワットの電力を生み出すのに必要なコストは石油が約10円、太陽電池が42円かかるのに対して、シェールガスは6円以下となっている。埋蔵量も石油が30-50年と考えられているのに対して、シェールガスは少なくとも160年はあるとされている。

シェールガスの掘削に成功した米国は、17年までに原油なども含めたエネルギーの純輸出国へ転じる予定だ。また、多くの製造業が安いエネルギーを求めて中国から米国へ生産現場をシフトさせることを計画しており、米国は数年以内に中国を抜いて、世界最大の輸出国となる見込みである。

米国はグリーン・ニューディール政策という言葉を最近使わなくなった。それもそのはずで、安いエネルギーが潤沢に取れることが分かった今、エコ政策を推し進めて雇用を確保する必要はなくなったのである。(過去記事:エコブームとは何だったのか?

フォードやGMは「シェールガスエンジン」を製造する工場の建設を密かにデトロイトで始めており、もはやEV(電気自動車)の開発は完全にストップ、将来的にはプリウスのような日系のプラグインインハイブリッド車がかろうじて残る程度になるだろう。

シェールガスは採掘時に大量の高純度水素も取れるため、水素電池の研究も盛んに行われている。日本勢のシェアが高いリチウムイオン電池は今後劣勢に立たされるであろう。リチウムイオン電池のセパレーターで圧倒的なシェアを有する旭化成は、今後の能力増強計画を白紙とする決断をした。

安倍総理は米国からシェールガスの輸入を確約してくることだろう。東電はすでにシェールガスを備蓄するプラントの建設を始めている。日本の電気料金はシェールガスの恩恵を得て将来値下がりし、国内製造業には幾ばくかの助けとなるだろう。太陽電池を屋根に載せた家は、電力買取制度が中断するリスクがある。

シェールガスの掘削技術は米国にとって外交上の強力なカードとなっている。日本にも秋田などに大量のシェールガスが眠っているため、安倍政権は米国に掘削技術の技術供与を要求しているが、同盟国と言えどもただではもらえない。バーターとしてTPPの受け入れや、米軍基地での譲歩が必要である。

一方で、米国が安価なエネルギーを自給できるという事実は、中国、ロシアにとっては最大の悲報である。すでに米国はウクライナなどに技術供与をチラつかせている。中国が尖閣の所有権を主張し、ここにも書いたように、ロシアと日本政府が急に歩み寄る姿勢を見せ始めたのも、米国を牽制しようとするそれぞれの意図が隠されている。

このタイミングで米国発のエネルギー革命が起きたことは注目に値する。中国の時代となると考えられていた世界情勢は、シェールガス革命によって米国の主導権が持続する可能性を秘めている。日本は米国の核の傘だけでなく、エネルギーの傘にも入らざるを得ない状況に立たされていると言えるだろう。
今、ホットですね
結局、日本は戦後からアメリカの傘下でしか生きていけない国ですよね。
愛人と揶揄されるのがよく分かります。
私が生きてる間は、そうなんだと思い柔軟に対処していこうかなと。。

アメリカ株を買える証券会社はいくつかありますが、小松原さんのお好きでない楽天は、先週にシェールガス関連を入れてますね。
どんな技術をもってしても、環境破壊はあると思います。
話はずれますが、経済を学ぶと、人間って地球の何なんだろーなーと思います_φ( ̄ー ̄ )
[ 2013/02/25 21:29 ] [ 編集 ]
Re: 今、ホットですね
るんさん、コメントありがとうございます。

楽天証券は私も口座持ってますよ。手数料が高いですけど、アメリカ株も充実していますよね。
もともとはDLJ direct証券というところに口座を開いて持っていたんですけど、途中で楽天に買収されて、そのまま楽天証券になりました。先日の記事に書いたとおりの流れですね。

人間も地球上で生まれた生物のひとつにすぎないと思います。人間は地球の歴史から見ると、ほんのちょっとしか存在しなかった種となるかも知れません。私は人類は将来、自らの過ちで自滅するのではないかと予想しています。テクノロジーは後退しないのに、人間は未熟なままだからです。
[ 2013/02/25 22:21 ] [ 編集 ]
「ここにも書いたように、」のリンクが正しくないようなので、修正していただけませんか。
[ 2013/02/26 17:14 ] [ 編集 ]
本当に。
こんにちは!
石油も電気も上がる一方なので
少しでも早く、安価なシェールガスが
流通する世の中に
なってほしいものです。
エネルギーの源を利用できるように人間が
勝手に作りあげた世の中だから、
なくなってしまったら、人間にとって最悪な時代になりますよね。
そして、いつかはなくなるものです。
暖房も食品も衣類も普通に生活する物、
全てが作られなくなるかも。
小学生の時に「資源はいつかはなくなる。
物を大切にしましょう。」
って、習いましたが、その時の先生は、
もちろん大人で、子供に教える立場として
一体どこまで考えていたのかなぁ。
なんて、昔の事を思い出しちゃいました。

昨日から北関東で地震が頻発していますが
これも地球のパワーというか、歴史というか。氷河期や飢饉などを繰り返しながら、
現代にいたっている地球。
その中の小さな小さな人間ですもの。
でも、その小さな人間の微力な力で
今の世の中があるんだなぁ。って、
思っていることがうまく書けませんが、
すごいなぁって思いました。


[ 2013/02/26 18:19 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
> 「ここにも書いたように、」のリンクが正しくないようなので、修正していただけませんか。

修正しました。ご指摘ありがとうございます。
[ 2013/02/26 20:51 ] [ 編集 ]
Re: 本当に。
花助さん、こんにちは。

化学のとんでもない発達により、我々は原油やガスをありとあらゆるものに加工しています。一部の薬や健康食品でさえ、石油やガスから誘導されています。

シェールガスまで人類が使い果たす頃には、小型の原子炉や、月で太陽パネルを付けるのか、分かりませんが、何かしら見つけているでしょうね。

例えいつかは滅ぶにしても、人類が将来どこまで発展するのか興味がありますね。
でも、とりあえずは、我々の電気料金が下がることを祈りましょう。
[ 2013/02/26 21:13 ] [ 編集 ]
え?
1Kワットの電力を生み出すのに必要なコストは石油が約10円、太陽電池が42円かかるのに対して、シェールガスは6円以下

シェールガスは縦に数千メートル掘り、さらにそこから横にも掘らなければならず、途中、水の出る層が有ったならばコンクリートで管を作らなければならないような面倒くさい油だそうですが従来の石油10円に対して
6円というのは本当ですか。
[ 2013/02/28 12:00 ] [ 編集 ]
Re: え?
本当です。実際には、6円よりもっと安くなると思います。日本でも製造業が自社のボイラーを石油からガスに換えるだけで、圧倒的に燃料費が安くなったりしています。原油で発電する時代は終わりを迎えています。
-------------------------------------------------------------------------
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE81K29220120205

米国では、地中の岩盤層から産出されるシェールガスの増産が急ピッチで進んでいる。米エネルギー省は1月、米国が2016年にLNGの純輸出国になるという予測を発表した。大増産を背景に米国の天然ガスの市場価格は過去2年間で半値以下に急落しており、現在100万BTU(英国熱量単位)当たり2.5ドル前後と、日本のLNG輸入価格と比べた場合8割も安くなっている。
[ 2013/02/28 13:18 ] [ 編集 ]
お答えありがとうございます。でも・・・
現在100万BTU(英国熱量単位)当たり2.5ドル前後

この価格は安すぎるそうです。

http://markethack.net/archives/51862987.htmlによると
2011年11月あたりからリグ数は減っていて、そのころの米国ヘンリーハブの天然ガス価格は
4ドル位?/百万BTUであり、この理由は「採算が取れなくなったリグがいまどんどん休止している」
からだそうです。

http://blogos.com/の辻元さんなどは安いエネルギーの終わりと読み解き、足るを知る生活を
勧め、説いています。

もうなんだかよく分からなくなってしまいました。
[ 2013/02/28 23:39 ] [ 編集 ]
Re: お答えありがとうございます。でも・・・
コメントありがとうございます。

確かにリグを減らしているので、天然ガス価格は足下で上がりました。しかし、6円というのは、先日チェサピークエナジーの経営陣とミーティングした時に手元にあった資料に書いてあったものですので、正確な情報です。彼らは天然ガスの価格があがり、かつそれが原油より安いと最も好ましいので、それを強調している訳ですが、それでも嘘は流石に書きません。ただ、6円というのは、あくまでも発電のためにかかるコストですけどね。

辻元さんという方の記事もそれはそれで真理を付いているでしょう。省エネで済むならそちらの方が好ましいです。でも、エネルギーを使うなら安い方がいいですよね。そんなことだと思います。
[ 2013/03/01 10:34 ] [ 編集 ]
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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