仙人の祈り

貯金はないが家を買う - それはFXよりもハイレバレッジ

好物のオキアミを食べながら海をプラプラしていた鮭も、4年が経つと、思い出したかのように故郷の川を探し始める。同じように、20代の頃はプラプラしていたヒトも、30代になると急に持家を探し始める。

「持家か?賃貸か?」の論争をするつもりはない。賃貸だと良質な物件がないとか、これから家族も増えるので手狭になるなど、家を買う動機はいろいろある。しかし普通のサラリーマンにとって持家は数千万もする買い物であるのに、最近では頭金が50万円しかない人まで買えてしまうという事実には、かなりの違和感を感じる。

給料が低いのは仕方がないが、30代にもなって50万しか頭金が用意できない身分で、何故に家を買うのか、そのロジックは理解不能である。私はかつてそういった友人から「ローンは固定がいいか変動がいいか?」という相談を受けたことはあるが、「家を買って大丈夫か?」という相談は受けたことがない。

さすがに相談に来ている人に対して「家を買うなんて分不相応だからやめておけ」とは私にも言えない。それに相手は住宅メーカーにすっかり洗脳されてしまっていて、もはや家を買うことが前提となっており、何を言っても仕方のない状態となっている。

しっかりとした人生設計やセルフマネジメントが出来ている人であれば、家は暖かい思い出と共に、人生を彩る資産となるだろう。しかし貯金もない人が数千万のローンを組むのは、投資家として言わせてもらうと明らかにリスク&リターンが合っていない。

金融機関は返済能力の低い人から、より多くのローン金利を搾り取る。「搾り取る」というより「吸い取る」という表現の方が良いかも知れない。「家を買ってこそ一人前」というプロパガンダで思考を妨げ、その隙をついて脳にローンを注入して奴隷にする。後はストローを挿してチューチュー吸っていけばよい。

差し押さえ物件ここで我々が忘れてはならないのは、かつて金融機関が返済能力が低く貸し倒れリスクの高い人々のローンをミックスさせて、ハイリスク・ハイリターンの金融商品(サブプライムローン)として投資家に転売したことである。それを組成した本人が一番危ないと思っていたからこそ転売(リスク移転)したのだ。

仮に2,000万の家を50万の頭金だけで買う場合、レバレッジは40倍となる。FXでさえレバレッジが25倍であることを考えると、いかにそれが異常なことであるかわかるだろう。

日本経済が縮小していくリスク、仕事がなくなるリスク、住宅市場の流動性がなくなるリスクなど、資産のある人でも住宅を購入することにはそれなりのリスクが付きまとうのに、セルフマネジメントが出来ない人がハイパーレバレッジで家を買う行為は、自己のバランスシートを薄氷の上に置くようなものである。

目先の利益のことしか考えない業者は、消費税が上がるから、金利が上がるからという理由で、情弱な消費者へ甘い言葉を囁きかける。本来ならば反対側で、ローンの支払い額、元本と金利の性質、固定資産税などを踏まえながら、しっかりとした返済プランをアドバイスしてくれる天使が必要である。

国は住宅に関しては、ローンの審査基準の厳格化や説明責任などの規制を強化した方が良い。そんなことをしたら景気が腰折れすると考える人は多いだろうが、社会全体では与信コストや、景気の底割れリスクが低下するため、メリットの方が大きい。

何と言っても我々はリーマンショックの教訓を生かさなければならない。すべてはローン審査の甘さがその始まりであった。日本という国自体のバランスシートのレバレッジが上がっている中で、個人のバランスシートまでレバレッジを上げた場合、そのリスクはもはや抱えきれない数値となっている。

自身の取っているリスクを過小評価したまま次の景気の谷が来た場合、破綻する個人が続出し、やがては国全体が破綻することになりかねない。マイホームは高嶺の花くらいが、実はちょうど良いのかもしれない。
[ 2013/03/01 18:00 ] 投資全般 | コメント(6)
レバレッジ
こんにちは!

家の購入とFXを引き合わせての
ハイレバレッジのお話し、
とても面白く読ませていただきました。
さすが、仙人さんだと思いました(^^)v
私は家を購入する貯金も力もありません
ので、もちろん賃貸派です。
でも例え力があったとしても、
家を購入すると、ずっとその場所から
離れられないし劣化に伴い修繕費用も
かかるし。
やっぱり賃貸派です。
貯金のない私には縁のない話しですが…
(^^ゞ
家を購入した友人、また購入したがって
いる友人がいますが、
旦那さまやご家族の問題なので
このような私の意見は言いませんが、
周りの既婚者はほとんどの方が
自分の持ち家を購入したいみたいです。
価値観の違いとでも言うのでしょうか。
でも、買えるようなお金が欲しいです!
お仕事、コツコツ頑張ります(^_^)/



[ 2013/03/01 18:47 ] [ 編集 ]
Re: レバレッジ
花助さん、コメントありがとうございます。

花助さんも賃貸派ですか。私も賃貸派です。
私のように不安定な職種だと、なかなか家を買って根をおろすことが難しかったりします。いろいろ考えると、私には賃貸の方が割安なんですね。家を買って、隣に嫌なうるさいオバサンとかいたら最悪ですしね。

花助さんであれば、貯金もこれからどんどん増えていきますよ。お金や世の中の動きを考えながら投資をゆっくりしていくのも手ですよ。
[ 2013/03/01 23:30 ] [ 編集 ]
リスク
リスクを過小評価して被る損害がコワイので、頭金半分貯めて買い、数年で完済しました。
(^^;←借金が苦手

私が小松原さんのブログを読むきっかけはリスクに対する記事を目にした時です(≧∇≦)きゃーーっカッケ~っ(注.かっこ良い)
お金の教育と同様、リスクについても学ぶ場が必要ですよね。

マンションを震災後に貸し、田舎で激安の古民家?を買いました(只今、忍者屋敷に改造中♡)
震災後、避難した人はマンション派が多く、一軒家は借り手が少なく動けない方が多いように見受けられます。
支払い能力はモチロンのこと、震災リスクも考える時代ですね_φ(・_・
[ 2013/03/02 07:44 ] [ 編集 ]
Re: リスク
るんさん、コメントありがとうございます。頭金で半分で数年で完済というのは凄いですね。るんさんのように賢く金融機関を利用するのが、健全であると思います。

本来ならばあり得ないハイレバレッジがまかり通っているのが、国と業界による策略であると見抜ける能力が日本の大衆には必要ですね。世の中というのは、リスク&リターンというのは必ず一定になるべきであって、そうではない話があった時は裏に何かある( ゚д゚)と感ずくような警戒感が必要ですよね。

震災リスクも大きいですね。私も浦安に家を建てて、一ヶ月で震災にあい、家が傾いてしまった人を知っています。住宅市場の流動性というリスクを書きましたが、その家の潜在的な買い手は少なくなっているため、市場価値は大きく下がってしまっています。震災のリスクが明らかになった今、埋立地に家を建てることはもう出来ないでしょうね。
[ 2013/03/02 08:30 ] [ 編集 ]
全く同感です
いつも勉強させていただいてます。ありがとうございます。

金融機関に勤務していた頃に友人からたまに相談されました。
大抵の場合、買うこと自体に反対したのですが、結局誰も思い留まってくれませんでした。

私の人徳のせいもあるかと思いますが、嫁やその親のプレッシャーに皆、勝てなかったようです。

借金を完全に否定するつもりはないのですが、「ローンが当たり前」という固定観念は取り払うべきかと思います。そのために必要なのは教育なのではないか、とも。売り手の良心に期待しても、難しいでしょうから。
[ 2013/03/02 15:38 ] [ 編集 ]
Re: 全く同感です
びらんしあさん、コメントありがとうございます。

そうですね、金融機関に勤めている人に取り敢えず相談してみることは、皆しているようですね。そして、相手はもう買うことが前提になっているんですよね。

身の丈にあったバランスシートにしないと、この激動の時代、何があるかわかりませんし普通は怖いと思うと思うんですが、私の地元の友人たちには、周りが買っているから取り敢えず自分も買う程度のことしか考えていなかったりします。なかなか困ったもんですね(´・_・`)
[ 2013/03/02 18:15 ] [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

記事の募集
  • 社会全般や政治・経済に関して、記事の寄稿を募集しています。お名前、タイトル、本文を記載しこちらまでお送り下さい
お問合せ
  • 出版・メディア関係の方のお問い合わせはこちら

管理人(Macoちゃん)が責任をもって小松原氏へ転送致します
人気記事(当ブログ内)
記事検索