仙人の祈り

ゲーム業界の行く末 - 「ハードは1つ」あればいい

この数年で大ブレイクした携帯ゲームは、当初のブラウザーベースの単純なカードバトルブームが一巡し、より複雑なゲーム性を表現できるネイティブアプリへの移行が進んでいる。破竹の勢いで売上を伸ばす「パズル&ドラゴン」がその代表例である。

一方で、旧来からある据え置き型ゲームは、携帯ゲームにユーザーを取られており苦戦が続いている。「可処分時間の争奪戦」でも述べたが、ユーザーは手元にあるスマホをいじる時間を増やしているため、テレビの前で座ってゲームをプレイする時間が減っている。

ゲーム部屋これに焦った据え置き型ゲームのソフトウェア会社は、自社の新作ナンバリングタイトルに「ソーシャル」や「アイテム課金」の仕組みをビルトインしてきている。昨年末に発売された「バイオハザード6」はプレイ途中で追加の課金アイテムが購入できるようになっており、携帯ゲームの要素を取り入れている。

つまり、携帯ゲームはよりゲーム性を高める方へ進み、据え置き型ゲームはよりソーシャルやアイテム課金を強化しユーザーを囲い込もうとしている。任天堂が切り開いたテレビゲームの世界は、インターネットや携帯の普及に合わせて様々な形となって製品化されてきたが、今再び一つなろうとしている。

さて、ここで興味が湧くのは次にゲーム業界を束ねる企業はどこかという点であるが、私はアップルかGoogleが次世代ゲームのデファクトを打ち出す可能性が高いと考えている。

未だに全容がハッキリしていないアップルTVやGoogleTVだが、テレビとネットが一体化していることは間違いない。そしてこれを最新ゲームや映画、音楽などがダウンロードできる、家庭内におけるエンタメの総合プラットフォームとして打ち出してくると推測している。

アップルTVでAppStoreに繋ぎ、本格的なゲームをダウンロード購入する。そして専用コントローラーを直接テレビに差して遊ぶ。外出先でもiPadやiPhoneに専用コントローラーを差せば、ゲームの続きをできる。当然ゲームにはソーシャルの機能なども埋め込まれており、友達との会話や協力プレイも楽しめる。ゲームに飽きたら、iCloud経由で購入した映画や音楽を楽しむこともできる。

こう考えると、これまでのアップルのソフトとハードの戦略が統一されてスッキリする。「スマホ普及で消える市場」で述べたように、スマホやタブレットはデジカメや音楽プレーヤーを始めとした、あらゆる電気製品の代替品となっているが、巨大市場であるゲーム専用のハードでさえもその例外ではない。

私見だが、日本で流行っている携帯ゲームは、欧米でブレイクすることはないと思う。欧米はテレビの前に座ってアクションゲームなどを真剣にやるのが文化として完全に根付いており、わざわざクオリティの低いゲームを携帯でやるようなことはないし、ましてやそこで課金アイテムを買うことはない。あくまでも主流はハイクオリティのゲームであり続けるだろう。

つまり、ゲームの世界は1社のプラットフォームを提供する会社と、ハイクオリティなゲームを制作できるソフトウェア会社のみが生き残る時代となり、時代の変化を見誤っている会社と、開発力のない会社は淘汰されることになる。今後、この業界ではビックネイムでさえ倒産するような、激動の時代を迎えるだろう。

ファミコンが誕生して約30年。様々な進化を経て、ゲーム業界はついに専用ハードレスという新たな展開を迎えつつある。我々は近い将来、カバンに入れた薄いノートのようなもので、おおよそすべてのエンタメを持ち歩くことになるだろう。
[ 2013/03/15 18:00 ] 投資全般 | コメント(14)
ありがとうございます。
早々にゲーム業界の記事をUPしてくださってありがとうございます。

とても勉強になりました。

任天堂がいずれソフトウェア専門の会社になるかもしれないのですね。

それでも生き残り、圧倒的なシェアを誇るであろう点ではSONYやSEGAより遥かに有利なのでしょうか。

ソフトウェアに特化したほうがリスクも少ないうえに強い会社になってもおかしくないと感じました。

問題はそのタイミングで、ハードで行き詰まり逃亡するような展開ではなく、未来を見据えて思い切った英断をするような展開が望ましいのかもしれません。
[ 2013/03/15 19:16 ] [ 編集 ]
Re: ありがとうございます。
はちさん、コメントありがとうございます。

任天堂は私は非常によく知っている会社ですが、今の彼らは戦略以前に、組織体制から見直す必要があります。
次の社長はサプライズの人事となるでしょうが、重要なのは彼を支える優秀な実行部隊がいるかどうかが肝となります。

ハードがなくなった場合の任天堂が取るべき道は一つしかありません。
[ 2013/03/15 22:30 ] [ 編集 ]

パズル&ドラゴンは世界的にも流行るのでしょうか?
[ 2013/03/16 00:13 ] [ 編集 ]
株主ではないですが
もう、いっその事 ハードは馬鹿でかくしてしまったらどうでしょうか?
「任天ランド」開園(笑)
マリオ、ドンキ、カービィ、ゼルダ、ポケモン、どう森、、、もう、チートです

このラインナップで、ソフトで負けたらビックリです。

後出しでも、「じゃんけん」なみに勝てると思うのですが?



[ 2013/03/16 03:16 ] [ 編集 ]
Re: 株主ではないですが
名無しさん、gontaさん、コメントありがとうございます。

パズドラは韓国ではある程度のヒットはしますが、それ以外では無理です。それ以外の国では、通信インフラが悪く、携帯ゲームがそもそもまともに出来ません。米国でカードゲームをやっている人は、所謂、日本のカワイイ系が好きなオタクだけですが、その人たちはパズルはやらないと思います。

仰るとおり、任天堂はこれまでの積み重ねによる有力タイトルをいくつも持っています。しかし、近年は組織がメチャクチャなことになっており、新作が出せない会社になってしまいました。5月に発売予定のピクミンでさえ発売できないので、既存タイトルの焼き回しすら出せなくなってきています。(これ以上は書けません、、、( ´ ▽ ` )ノ)
新社長がどう考えるかですが、私は任天堂はディズニーのように版権ビジネスで食べて行くべきだと思っています。
[ 2013/03/16 10:15 ] [ 編集 ]
なるほど、勉強になりました。任天堂テーマパーク当たりそうですね。
[ 2013/03/16 11:28 ] [ 編集 ]
新社長について
いつも勉強させていただいております。

この業界にいる者ですが、いつもながら鋭い指摘だと感じました。

新社長(=現経営陣退任の可能性)の話は先日の第3四半期の発表から出ていましたが、仙人様の読みでも避けられない状況でしょうか?私は今の社長については個人的に好きなので、まだ続けてもらいたいところです。(一部の経営陣はもう老害だと思いますが・・・)

周りから見ていても、組織は大企業病にはまってしまっていると感じています。
[ 2013/03/20 01:03 ] [ 編集 ]
Re: 新社長について
FTさん、コメントありがとうございます。

業界の方からのコメントなので、緊張しますね( ̄^ ̄)ゞ。

1. 生産管理を担当していた取締役の方が亡くなったため、サプライヤーの管理が上手くできていない。
2. 有名な宮本さんのクリエイティビティがなくなってきてしまい、若手のアイディアが埋れたままになっている。若手が会社を辞め始めている。
3. 人材不足に陥っており、特に世の中のトレンドであるネットワーク系の人材が全然いない。いないどころか、担当部長さえ欠員している。
4. しかたがないので、岩田社長が大量の兼務をしている。このため、岩田社長が社長業をできていない。
5. 創業家の山内御大が「俺の目の黒いうちに、孫を社長にしろ」と言い始めている。

これらの条件を考えると、なかなか厳しいかも知れません。
[ 2013/03/20 09:13 ] [ 編集 ]
Re: 新社長について
お返事ありがとうございます。
記載いただいた5つの状況からすると、確かに厳しそうですね。
特に5つ目などは驚きの内容でした(;^_^ さすが仙人様の情報力はすごいです。
さらりと記載いただきましたが、2ちゃんのゲハの人たちが見たら大騒ぎになりそうですw
[ 2013/03/20 22:16 ] [ 編集 ]
Re: Re: 新社長について
FTさん、コメントありがとうございます。

5ですが、孫は大学出たばかりなので、もしかしたらN取締役などが取り敢えず一度社長をやるかも知れません。しかし、本命は孫ですでに固まっているでしょうね。創業家に主権が戻るわけです。
[ 2013/03/20 22:36 ] [ 編集 ]
本当でしょうか?
小松原さんこんばんは。
任天堂の件で一つ質問なのですが、
高給の任天堂を辞めて行く若者がこの不景気にわんさかいるとは思えません。宮本氏は年をとったとはいえ数少ないクリエイティブな人ですし若手を潰しているとは思えません。
ネットワーク系の人材は任天堂のようなどちらかといえば閉じた会社にとってあまり重要ではないのでは?
仮にネットワーク系のビジネスを任天堂はどう生かすべきとお思いでしょうか?あと山内氏は自身一代で終わりと過去に発言しています。孫を起用するなど山内氏の持論に一番反する行為に思えます。いかがでしょうか?
[ 2013/03/22 21:11 ] [ 編集 ]
Re: 本当でしょうか?
るるるさん、コメントありがとうございます。

本当だと思います。任天堂の若手がグリーやDeNAに高給料で転職しています。宮本さんが若手のアイディアをダメだしして採用しないために、任天堂は新作が出せずに、この数年、過去のヒットタイトルの焼き回ししか出せておらず、怨嗟の声が上がっています。
山内氏の意図も本当であるとしか言えません。現在タカラトミーにいる孫が自分に似て超優秀であると分析しているようです。山内氏の子どもは任天堂の企画部にいますが、息子は才能がないとして、社長は勤まらないと公言しています。
もっと、凄い話もありますが、残念ながらここで書くことは出来ません。
[ 2013/03/22 21:31 ] [ 編集 ]
何度もすみません
どうもわからないのはあの山内氏が才能だけで経営を委ねるとは思えないんですね。自身が運というものをかなり尊重されているし失意泰然得意冷然の言葉からいえば今の任天堂の状況も想定の内にあると思うのですが、年をとって考え方に変化が生じたんでしょうか。
任天堂のDNAが揺らいでいるとあればやはり危機なのかもしれません。
ここでは書けないとという話ですがそれは株価に悪い話でしょうか?
[ 2013/03/22 22:38 ] [ 編集 ]
Re: 何度もすみません
るるるさん、コメントありがとうございます。

山内氏は100人の凡人よりも1人の天才を重んじる方だと思います。ご本人も大学中退で社長になっているので、孫に社長を任せるという発想は自然なことではないでしょうか。

私は米国株や日本株、アジア株をメインとしたプロの運用者です。一般の投資家とは違い、本気であれば経営者を換えたり、経営戦略を変えるように圧力をかけ、自分たちで企業価値(株価)を上げて回収することもします。任天堂に限らずですが、私が資本市場で何を行うかは、影響が大きいため残念ながら述べることは出来ません。
[ 2013/03/22 23:08 ] [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

記事の募集
  • 社会全般や政治・経済に関して、記事の寄稿を募集しています。お名前、タイトル、本文を記載しこちらまでお送り下さい
お問合せ
  • 出版・メディア関係の方のお問い合わせはこちら

管理人(Macoちゃん)が責任をもって小松原氏へ転送致します
人気記事(当ブログ内)
記事検索