仙人の祈り

日本経済のブースター - 「偉大なる個人投資家」待望論

ファンドマネージャーである私が言うのもなんだが、「プロの投資家と個人投資家の違いとは」で述べたように、投資で儲けるという一点に限って言えば、両者の間にスキル的な差はまったくないと断言できる。むしろ、これほどプロと素人の間で差別化が出来ていない職業も珍しい。

私は日本人として、日本の資本市場の活性化を願っている。「資本市場が経済の新陳代謝を促す」という、本来あるべき機能が実際にワークしているのは米国くらいのものであり、日本経済はまだ資本市場のパワーを生かしきれていない。そのために必要なものの一つとして重要なのが、「偉大なる個人投資家」の存在である。

「敗軍の将は兵を語らず」と言うが、まさに投資の世界にもこれはそっくりあてはまる。全体で考えれば負けてばかりのサラリーマン・ファンドマネージャーが偉そうなことを言っているようでは市場は育たない。むしろ100%自身で投資リスクを負って勝ち上がって来た偉大なる個人投資家こそが、市場での発言力を持つ姿が理想である。

米国企業の決算説明会では、アナリストやファンドマネージャーに混ざって、偉大なる個人投資家が経営者に質問をしてくる。私が某アパレル大手の決算説明会(電話会議)を聞いていた時、その会社の3%の株を保有しているメリーランド州のお婆さんが突然質問をしてきたことがある。

「私はあなた達のブランドがとっても好きよ。でも最近は変な会社を買いすぎだわ。お金は大切にしなきゃダメよ。」と言われて経営陣が言葉に詰まってしまったことがあったが、その光景は何とも気分爽快であった。お婆さんは会社のオーナーであり、経営陣は彼女に変わって経営を委託されているのである。電話会議で経営陣にモノ申したのは、結局お婆さんだけであった。

証券会社のアナリストのレポートや発言は、会社側の大本営発表を単にコンパクトにまとめただけであって、何の考察も洞察も加えられていない。加えられているのは、お客さんに頻繁に買ったり売ったりしてもらおうとする恣意性や、アナリスト自身のプライドであって、本当にリスクを負うのはお客さんである。

巨大な資金を実際に運用する運用会社のアナリストやファンドマネージャーは、資本市場との向き合い方はいくらかマシだが、それでも「運用哲学」なる大人の言い訳があり、実は将来ブレイクする金の卵を見逃していただけであるのに、「あれは我々の運用哲学に反するので投資対象ではなかった」などと言って投資判断のミスを覆い隠そうとする。

日本の資本市場の救世主となり得るのはこのようなアタマの堅い人たちではなく、リスクを負って果敢に奇貨へ投資をして成功した、力のある投資家である。ウォーレン・バフェットの言葉が重く聞こえるのは、彼自身が偉大なる個人投資家であるからだ。彼の資金は彼の信念と結びついているが、証券会社や運用会社のような既存の勢力からはまったく独立している。

日本でもこのようなスタープレーヤーが増えてくるととても面白い。もちろんそれにはデフレ経済から脱却することや、個人の直接投資を税制優遇するような法制度も絶対的に不可欠である。財閥系の大手金融機関が幅を利かせているようでは、いつまで経っても日本の資本市場の裾野は広がらない。それよりも、野に潜む本当にセンスのある投資家を呼び覚ますような仕組みと風土が必要である。

上場企業に対して個人投資家がもの言う株主となる日が、いつの日か来ると信じている。
100年後の未来予測に・・・
ふとしたきっかけでこのサイトを知り、先日より楽しく拝読させていただいております。珍しくコメントがついていないので、ちょっと書き込んでみます。

どこの国でも同じなのかもしれませんが、「労働」という行為が美徳とされているなかで、キャピタルゲインを目標とする投資(時に投機)行為は、受け入れられにくいのかもしれません。
まして、アメリカなどのように勝者が称賛されやすい土壌ではない日本では、「相場師」という言葉の響き自体が怪しいのかも・・・。物言う株主で有名になった村○ファンドだって・・・聞いちゃったと言われたら、聞いちゃったのね~!
いっそ、100年後の未来に、「ある日本人の個人投資家との昼食会が、オークションにて1億円で落札」とかど~ですか?
[ 2013/03/14 07:30 ] [ 編集 ]
Re: 100年後の未来予測に・・・
えぷさん、コメントありがとうございます。

そうですね。日本では投資のような不労所得で儲けることは美徳とされない文化があるので、投資家教育はなかなか進まないという問題があります。実際には、不労ではなく、かなりいろいろ調べたりして頭脳労働はしているんですけとねΣ( ̄。 ̄ノ)ノ

アメリカなどの大口の個人投資家はとてもカッコいいので、なんか日本でもドキュメンタリーやドラマなんかを作って欲しいなと思ったりはしますが。私も、何回か、漫画やドラマの制作のために助言をしたことはありますが、結局ハゲタカ以外は、たいしてヒットしなかったですね…>_<…。
[ 2013/03/14 09:00 ] [ 編集 ]
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[ 2013/03/14 17:16 ] [ 編集 ]
Re: 決定!現場復帰
逃げない中高年さん、コメントありがとうございます。

新しい就職先が決まったとのことで、本当におめでとうございますV(^_^)V。延命措置中のS社を脱して新しいチャレンジをされるわけですね。素晴らしいご判断だと思います。

今後ともコメントお待ちしています。
[ 2013/03/14 18:34 ] [ 編集 ]
理想は個人投資家、そして生き延びる!自分の夢の中で生きたい。
[ 2015/04/09 06:36 ] [ 編集 ]
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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