仙人の祈り

バリュエーションの嘘ホント - 証券会社の予想にご用心

株式投資をしている人ならバリュエーションという言葉を聞いたことがあるかも知れない。

バリュエーションとは、株価が高いか安いかを推し量ったり、同業他社比較をしたり、妥当な株価は幾らくらいかを算出する時などに使用する。

最もよく使われる指標はPERというもので、「株価÷一株当たりの利益」で算出する。例えばトヨタ自動車の場合、株価が5,800円、来期(14/3期)の一株当たりの利益が438円と証券会社のアナリストが予想しているので、PERは13倍ということになる。

ギリギリの戦いこれは一年で稼ぐ利益に対して、何倍の株価で市場はトヨタを評価しているのかということを意味する。だが、当然ながらこれは万能ではない。

例えば、トヨタのPERというのは決して一定ではなく、時と場合によって評価が全然違う。PERは市場がリスク選好になるほど拡大しやすく、逆にリスク回避になるほど縮小する傾向がある。つまり、結局はマクロ環境やお金の流れを予想しなければ妥当なPERの水準はわからないということだ。

証券会社のアナリストなどは、「PERがxx倍であり株価は割安、買いを推奨する」などというロジックで投資推奨をするが、如何にこれが意味のないものかがわかるだろう。

リーマンショックから4年経ってもフォルクスワーゲンやプジョーなどの欧州自動車メーカーのPERは4倍という安さで放置され続けた。4倍とは、別の言い方をすれば4年で投資した額と同じだけの利益を会社が稼いでくれるということを意味する。

しかし、そんなオイシイ話というものは世の中には存在しない。つまり市場は証券会社のアナリストが予想している数字よりも、実際の利益が低いと考えているということだ。一株当たりの利益が下がれば、PERは上昇するため、PERが低いから買いというロジックは通用しなくなる。

市場と証券会社のレポートのどちらが正しいかと言えば、市場の方が正しいことが大半だ。特に大型株ほど多くの参加者の情報が株価に反映されており、情報のギャップというものが存在しなくなってくる。

アップル株が終わったという記事を昨年の夏頃に書いたと思うが、その頃は証券会社のアナリストは66社中56社が買い、6社が中立、4社が売りを推奨をしていた。

我々は米国や中国の業界分析、消費者動向から見て、アップルの業績はそれ程高くはないと見抜いており、iPhone5の発売と同時に売却を始めていた。同僚は「アップルのPERはまだ一桁台という破格の安さ」と買い煽るレポートを、その時すでにジョークのネタに使っていた。

バリュエーション指標というものは数え切れないほどあるが、当然ながら万能なものというのはない。そして、証券会社の業績予想や最もらしいレポートはまったくあてにならない。株式投資とは一寸先は闇。常にギリギリのところでプレーをする厳しい戦いである。

投資をアートに例える人もいるが、結局のところ、自分で描いた未来が一番正しいと信じ続けるしかない。すべてのリスクを負うのはあなたなのだから、あなた自身の予想以上に尊重すべき指標というものは存在しない。

バリュエーションはあくまでも補完材料でしかなく、意識決定をする材料ではないということを念頭に入れて置くとよい。

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[ 2013/04/26 18:00 ] 投資全般 | コメント(7)
PER,PBR、ROE
「PERが安いから買い」というロジックに隠れている矛盾。 なるほど、目から鱗ですね。 同じような矛盾に「ROEは高いほど良い」があると、日ごろから感じています。 利益額が同じであれば、自己資本比率が低ければ低いほど(借入れが多いほど)ROEは上がりますからね。 また、ベンチャー企業を評価する際に全く役に立たないのがPBRだと思います。 伝統的な製造業であればある程度役に立ちますが、ITやバイオ企業などの資産は「アイディア、人材、ネットワーク」でこれらは一切BSには反映されないのですから。 私が投資している(といっても小額ですが)バイオ企業は、MITのパテントに基づいた局所止血剤(現在承認待ち)のライセンス許諾がビジネスモデルなのですが、株価は8000円以上で赤字、PBRは30倍です。 ところで、日経:ダウ比率が1:1に近づいてきましたね。 この指標には何か意味があるのでしょうか? 仙人さんのご意見を聞かせてください。   
[ 2013/04/26 21:16 ] [ 編集 ]
指標…波と感よね…
私の指標は…
短くて5年…
長くて10年のチャートを眺め
時代の波を身体で感じることくらい
…かしら

これほど自分の感を試せるものは少ないし…人に委ねるなんてリスクこの上なくできない話…

仙人さんらしいところは…これを商売にしてるのに…真に大事なことを教えて下さることよね…

投資はその人の生き様が表れる…
自己責任だからこそ…自由で楽しい世界…

オ~~レッ


[ 2013/04/26 21:40 ] [ 編集 ]
Re: 指標…波と感よね…
個人投資家さん、仙女の踊りさん、コメントありがとうございます。

なるほどダウと日経が近くなっているということですか。下の画像は昨年五月に作った、ドル建てで見たTOPIXとS&P500を比較したものです。
http://blog-imgs-48-origin.fc2.com/s/e/n/senninn/20120505.png
この時に開いていた差はかなりのものがありますが、今は当時の半分程の差にまで是正されました。ただ、GDPや企業の成長率、インフレ率を加味すれば、妥当な差であると言えます。日本株が安すぎるというロジックは通用しなくなってきていると言えるでしょう。

仙女の踊りさんの仰るように、5年や10年の時間軸を取れるのが理想ですね。投資は時間軸を長く取れるほどに勝率が上がります。
[ 2013/04/26 23:53 ] [ 編集 ]
Re: 指標…波と感よね…
ドルベースの対比グラフ有難うございます。 やはり日経は、金融相場極まれりってとこですかね。 景気の実態が追い付くにはまだまだ時間がかかるでしょうから、それまでに一度ガラを覚悟しておきます。
[ 2013/04/27 00:20 ] [ 編集 ]
投資はしてないけど
>投資をアートに例える人もいるが、結局のところ、自分で描いた未来が一番正しいと信じ続けるしかない。すべてのリスクを負うのはあなたなのだから、あなた自身の予想以上に尊重すべき指標というものは存在しない。

子供のこととか仕事のこととか、生き方とか考える事がいっぱいで全部なんだかごちゃごちゃとしてて、最近ちょっと人生の岐路にたっているみたいなので、当たり前のことが胸にしみました。

いつもどうもです♪
がんばろーっと♡

[ 2013/04/30 13:05 ] [ 編集 ]
はい。
何度も読み返しました。

ありがとうございます。


私も投資をしていくなかで「確固たる信念と柔軟な感性」が必要だと痛感しています。


人生みたいですね(笑)


[ 2013/04/30 22:59 ] [ 編集 ]
Re: はい。
みーさん、miyuさん、コメントありがとうございます。

そうですね。会社を分析したり、株に投資することは、ある意味ては人生の縮図のような含蓄があると思います。幸福も困難も続くことはなく、己を律しながらも信じる心が必要ですね( ̄Д ̄)ノ。ホント、正解というものがない、難しいゲームです。
[ 2013/04/30 23:11 ] [ 編集 ]
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筆者紹介

check 小松原 周 (あまね);

ファンドマネージャー・アナリスト。日本株(東京)や米国株(ウォール街)の経験が長く、取材した会社は5,000社を超える。徹底したリサーチと業績予想に基づき投資判断を行うファンダメンタリスト。

*ブログ記事は、どのような場合であっても個別銘柄の投資判断に関して述べることはありません。

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