仙人の祈り

荒れる株式市場の灯火 - ROEの重要性

前回、PER(株価/一株当たりの利益)という指標は相対的なバリュエーション指標でしかなく、時に恣意的に利用され、株を売り買いする口実に使われることがあるので注意が必要であると述べた。(過去記事: バリュエーションの嘘ホント

目先の企業の利益予想というのはそれ程変わらないのに、株価というのはいろいろな要因で毎日ダイナミックに変動する。PERばかり見ていても、それは気まぐれな市場の波に揉まれているだけであって、「木を見て森を見ず」という状態となり、正確に間違った判断をする可能性がある。

第九の波では何を信じればよいのかというところだが、個人投資家の方へ私がアドバイスできることがあるとすれば、ROE(Return on Equity)は絶対に押さえておきたい指標の一つである。ROEとは(当期利益/株主資本)で求めるもので、つまり株主が保有する株主資本に対して、どれくらいの利益を1年で稼いでいるのかを見る指標である。

ROEの良いところは、PERと違って株価がどうのこうのということは関係なく、純粋に企業が稼ぐ力がどれ程のものかを見るものであり、そのまま企業を横比較する時にも使えるということである。

日本の上場企業のROEの平均値はおおよそ5%程度であるが、これは100円を投資したら、1年で会社は5円の利益を出してくれるという意味だ。ちなみに、専門的な見方をすると5%という水準は及第点以下の極めて低い水準であり、先進国の中では最低の水準である。

機関投資家にとってROEというのはかなり重要な指標であって、企業の経営者と対話する時も、「どのようにしてROEを高めていくのか」という視点で議論をする人はとても多い。何故なら、ROEを高める手段の一つは、より高い売上成長や利益率の改善によって当期利益を押し上げることであるが、もう一つの手段は、株主資本を減少させることでも達成できるためだ。

つまり、たくさん稼ぐだけではなく、その利益を配当や自社株買いなどで株主に還元をしてくれる会社のROEは自ずと上昇していくことになるわけで、投資家がROEの高い会社、或いはROEが上昇していく会社を好むのは、至極真っ当なことである。当然、過去のトラックレコードを見ても、そういった会社の株価は、そうでない会社の株価よりも上昇している。

日本の上場企業のROEが低いのは、稼いだ利益を株主に還元せずに、会社に溜め込んでいることも要因の一つである。高ROE企業がキラ星のごとく存在する欧米の企業は、余剰なキャッシュはその所有者である株主に還元してくれる。米国では過去10年で発行済み株式の80%を自社株買いしている自動車部品の小売企業や、60%以上のROEを出し続けているアパレル企業など、資本効率という概念において遥かに日本の先を行っている。

東証も高ROEの企業だけを集めたインデックスを作成するそうだが、これは日本の上場企業にROEを意識させる良い機会となるだろう。株式市場は常に大波の中にあって、心が休まる時というのはあまりない。長期投資を心掛けていても、足元で株価が急落した時に狼狽売りしてしまったり、急騰している時に高値掴みしてしまったりする。

ROEとはそんな大波の先に見える灯火のような存在である。高いROEを出すことを経営者がコミットしてくれている企業であれば、相場の荒波に耐えて長く持ち続けていれば、いつかは投資家に報いてくれる日が来るという希望が持てる。皆さんも、ROEが何%であるかという切り口で企業を見てみてはいかがだろうか。きっと投資のスタイルが変わって来るはずである。
[ 2013/06/19 18:00 ] 投資全般 | コメント(5)
roeが低いのは内部留保が理由と仰いましたが、安易に配当や自社株買いをする事の方が成長率が低下する要因ではないでしょうか?

内部留保を投資に回さない場合は確かにroeは成長しないですが、、、。
今後、成長戦略により、企業の投資減税で内部留保が有効利用されれば、日本企業のroeが改善され、株価が上昇してほしいですね。
[ 2013/06/19 19:22 ] [ 編集 ]
いつも見ています。
鋭い視点に、いつも感心しています。良かったら、来てください。

http://blog.livedoor.jp/mojo0043/lite/archives/29534896.html
[ 2013/06/19 20:52 ] [ 編集 ]
この9波を超えて
生き延びる気、まんまんです笑

底値で買うことを心がけているので
途中で恋愛だ結婚だ仕事だと、数年放り投げているうちに上がり
ROEとかPERとか意味わからないでここまできてしまいました
自分の持ち株みたら、5%超えていたのでこれでいいのかな?と

投資は株だけでなく、自分や仕事や教育と様々な場面で必要なことですが
これらにもROEをあてはめてみたら、私的には50はないと投資の対象にはならないので、株は自分にとって低い位置だと気づくことができました
え?ROEはそんなモノの指標ではない?(・v・;)

日本もアメリカも他国も、この波が押し寄せようとしていますね
これを超えられたら、希望あふれる素晴らしい世界であって欲しいと思います


[ 2013/06/19 21:59 ] [ 編集 ]
明るい投資講座
おはようございます。

具体的かつ誰でも調べられる方法を
ありがとうございます。

幸いヤフーファイナンスでは
直近3期分が見られるので、
変化率も見ながら
長期投資の道標にしたいと思います。

日常生活でおっ!と感じる会社を見つけ、
HPに中長期の数値目標を確認し、
シェア度や成長性や配当を調べ、
下界に降りてポチッとするイメージで。

人生の幸せ指標は、
モチロンその人の価値観で大きく異なるでしょうが、
存在意義への充足感、言い換えると
社会や家族を始めとしたコミュニティ貢献度が
入ると気持ち良さそうです。

少なくともポチポチ病がないだけでも
幸せです(笑

[ 2013/06/20 06:40 ] [ 編集 ]
Re: 明るい投資講座
キャンプさん、mojoさん、るんさん、ゆきさん、コメントありがとうございます。

本文ではあまり小難しいことは書きませんでしたが、ROEという指標はあらゆる企業分析の公式に応用されて使用される、極めて重要なものです。

日本の上場企業は220兆円もの余剰な現金を保有しています。当然、運転資金や有事のためにある程度は目をつぶれますが、これだけあるのは異常です。余剰な現金はすべてその持ち主である株主に返すのが基本ですが、それが守られていません。

株主総会ではオーナー一族や、関係会社が大株主であることが多く、少数株主の意見が通らない構造になっていることが問題です。ガバナンスが機能していない会社のROEは低くなることが過去の実績から証明されています。

ROEが改善していく会社を長期で持てば、百戦して危うからず、ですね。自分に言い聞かせる意味もありますが、これは金言だと思いますよ。
[ 2013/06/20 19:55 ] [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

記事の募集
  • 社会全般や政治・経済に関して、記事の寄稿を募集しています。お名前、タイトル、本文を記載しこちらまでお送り下さい
お問合せ
  • 出版・メディア関係の方のお問い合わせはこちら

管理人(Macoちゃん)が責任をもって小松原氏へ転送致します
人気記事(当ブログ内)
記事検索