仙人の祈り

公募増資にご用心 - 証券会社に騙される情弱企業

足元で日本の上場企業による公募増資が頻発している。上場企業は決算を公開し、投資家から高い成長やリターンを求められるというプレッシャーを受けることになるが、その対価として、公募増資を行い、市場から直接資金を調達できるという特典がある(直接金融と呼ぶ)。

しかし、リンナイ、電通、大和ハウス、オリンパスなど、この数日で発表された主要な公募増資には違和感を感じる。これらに共通している傾向が、1) 最大で14%程度の希薄化、2) 自社株の売り出しを組み合わせている、3) どうしても調達が必要なほどの動機がない、4) 資本政策などのディシプリンが弱い会社ばかり、5) 幹事団が野村、みずほ、三菱UFJ、などである。

裏切り電通は調達額の全額を、昨年度のイージス社買収のために(みずほ銀行から)借りた資金の返済に充当するという極めて後ろ向きの内容であるし、大和ハウスもネットD/Eレシオが0.2倍という強靭な財務バランスを有し、なおかつ流動化不動産をREITに売却すればすぐにでも1,000億以上の資金調達が出来る状態にありながら、公募増資に踏み切っている。(もともと市場と対話する気のない)リンナイに関しては理由すら分からない。

これらの背景にあるものは、気づいている投資家も多いと思うが、ごく単純なものである。つまりは、野村の営業マンの口車に乗せられたということだ。株価が年初来で2倍になったのを見て、営業マンは大企業にアプローチを仕掛ける。「今が増資の最高のチャンスです。キャッシュを調達して、将来の戦略の幅を広げましょう!?」、などと言って情弱な企業を丸め込む。

ここで自社の事業の収益性やキャッシュフローの創出力、最適な財務バランスなどを緻密にシュミレーションしているような会社であれば、営業マンの誘いを一蹴する。しかし、企業内ディシプリンが弱く、何となく上場しているだけの情弱な企業は、「株価も上がってきたことだし、やっとくか!!」くらいのノリで幹事団に多額のフィーを支払って、公募増資に取り掛かってもらう。

機関投資家が経営陣とディスカッションをする時、最も見ているのは、深く戦略を練っているか、投資の効率性を考えているか、資本市場と対話する姿勢があるか、などのポイントである。オリンパスは論外として、日本にはコーポレートファイナンス理論どころか"ROE"という言葉すら知らない経営者が多い。このような会社に限って、株価が上がってくると意味のない公募増資を行い、平気で既存株主を裏切るようなことをするので、投資家は注意が必要だ。

さて、今月末から始まる第一四半期の決算に注目してみると面白い。万が一にもないだろうが、これらの会社の決算が悪かったら、事前にそれを知っている経営者は株価が下がる前に公募増資に踏み切っている訳で、インサイダー取引である。もしもそんなことが起こった場合、経営陣は総退陣し、汐留の自社ビルを売って投資家に還元するくらいのことは必要であるだろう。

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[ 2013/07/09 18:00 ] 投資全般 | コメント(12)
こんばんは。
大体そもそもの話が野村證券自体も平気で莫大な増資しましたよね。
初めて口座を作ったのが証券会社が野村で、今でも多少MRFに残高を残しているせいか、ついこの間も条件の良い社債(ソニー)が有るので買いませんかとセールの電話が有りました。

サントリーも買いたかったけど、野村さんのせいか、ちょっと買いたいと思える値段では無かったし…。

本当にイラッとくる会社です…
[ 2013/07/09 19:21 ] [ 編集 ]
あらゆるフィクションで「株といえば売買差益!」って描写されてて株とか資産運用をまだよく知らない視聴者達の間でも短期トレーダー的思考が醸成されてる気がします。
あっまさかそういったイメージがROEが低いだのという投資家軽視疑惑の発端となっている可能性が…?

まあそれはそれとしてかく言う自身が情報のレベルが低くて超短期売買してる者の一人なんですけど、たとえ大口の投資家が短期で売買してたら企業から見たら「おめさ権利買ってんだからいちいち売るんでねえ」と思うんですかね
[ 2013/07/10 01:29 ] [ 編集 ]
ROEすら知らない経営者、が気になり
うちはただの法人ですが6月末決算のバランスシート、今日じっくり見てきましたよ~
ROEは18.8でした
父も企業人なので、毎年見せては褒めるから良い方?くらいの感覚でした( ̄▽ ̄)←本能だけで生きてきました
営業も多いですが、必要ないものばかりで断りますし、浮かれるコトなく本業ではアホみたいに堅く地道ですヽ( ̄д ̄;)ノちょっとホントなんだけどっっ
小松原さんの株に対する考えは、私の株には当てはまりませんが、本業だとナルホド!と理解できます
だって祈るよーに、地道ーに、ですからね_| ̄|○あ~きっつ~笑
[ 2013/07/10 20:48 ] [ 編集 ]
いつも勉強になります。
仙人さんは、シャドーバンキングが第2のサブプライムになる、いやそれ以上の影響を及ぼす可能性について、どのようなリスクヘッジを想定されてますか?
[ 2013/07/11 08:44 ] [ 編集 ]
Re:
皆さんコメントありがとうございます。

ROEは業種業態によって水準感はやや異なりますが、一般的には付加価値の高いサービス業などが高くなる傾向があります。設備産業ではないため、資産が軽いからです。それでも18.8%はそこら辺の上場企業と比べても高い方ですので、立派であると思います。

シャドーバンキングの問題は2年以上も前から語られていますので、市場では慢性病のような受け止め方をしています。中国の株価はすでにリーマンショックのボトム近くまで調整しており、市場はもともとこの問題に関してリスクを織り込んでいるため、ここから更に大きなショックが起きる可能性は小さくなって来ています。

この件に関してヘッジは現段階ではしていません。私は付加価値の高い会社にしか投資しませんので、輸出がどうだとか、在庫がどうだとかには、もとから影響を受けるような投資はしていません。

一つ前の記事で書きましたが、中国でショックが起きる場合には、ある決定的なシグナルが生じます。これが何であるかはここで答えることは出来ません。我々はプロですので、負けは許されません。中国に関してももとからアンテナを張り、独自のネットワークで調査を進めています。
[ 2013/07/11 09:40 ] [ 編集 ]
裏切られない生き方
信念を持ち実行し続ける事。

当たり前の事だが続けるのは困難な事を
ブームなど狙わずコツコツと積み上げる事。

王瑞雲は私の理想だ。
地道な活動は目立つ事は無いが、他の追従を許さない
彼女だけの専門性の高さがある。

更に素晴らしいのは、
男女を問わず賛同する同士が居り
信頼関係が成り立っている事である。
[ 2013/07/11 12:43 ] [ 編集 ]
ご丁寧なご回答誠に
ありがとうございます。おおよその方向性について、示唆いただきました。

[ 2013/07/11 20:51 ] [ 編集 ]
はじめまして
いつも興味深く拝読しています。
最近懸念しているのは、民主党時代の7倍以上も国債を発行してしまって
アナリストの藤巻氏が、以前から盛んに言われているように、近いうちに
いよいよハイパーインフレが起こってしまうのではないかという事です。
預金封鎖とかは、本当にありえるのでしょうか。
単なるネガティブキャンペーンならいいのですが。
[ 2013/07/16 17:03 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
なるほど藤巻さんは参院選でアベノミクスに対してのネガティブキャンペーン中で、忙しそうですね。
藤巻さんは万年日本崩壊、円安論者ですが、極端な表現を除いたとすると、概ね私も彼と近い意見を(というか懸念を)持っています。それは当ブログでもいろいろと書いていますので、読んでみて頂くと参考になるかも知れません。

コメディータッチで読みたい場合は、以下の記事などを読んでみて下さい。日本国が経済崩壊した場合のネガティブシナリオです。
http://senninn.blog.fc2.com/blog-entry-586.html

参院選で与党が大勝するのはよいことです。ここで政争を繰り広げているような余裕は日本にはなく、ここは一気に改革を推し進めて競争力を高めなければ後がありません。これだけ借金を膨らませたのですから、明確なリターンが得られなければこの国は終わりだと思ってよいでしょう。今、将に我々は正念場にいると思います。
[ 2013/07/16 17:49 ] [ 編集 ]
K総理、あとはヨロシク( ̄^ ̄)ゞ
アメリカも、ものすごい借金大国ですよね
今、アメリカが必死に水面下で考えてるのは、いかにマジメに返さないで、さら~っとリスクを低くして国を守るには?ではないでしょーか

自分がアメリカの大統領になったツモリでどう出るか?
想像膨らませ、一般ピーポーは、それに対する対策を練る必要があります
日本のニュース見てるだけでは、犬死にするんじゃなかろーかと、日本のメディアに、頭にくるより、自分の仕事にプライドはないのか?と呆れます
いくつかの値動きを見て、私なりに考え行動してますが、経済って、つくづくアメリカ中心で動いているんだな~と( ̄◇ ̄;)
タコ?タコは捕まえたら、塩コショーでしょう!
世界がナントカ教になるのはイヤなので、アメリカ追従派ですが、諦めず自分でできるコトは、やるしかないと腹をくくるこの頃です
┌(; ̄◇ ̄)┘あー世の中って、ホントきっつ~笑
[ 2013/07/16 19:37 ] [ 編集 ]
いよいよ?
お忙しいところさっそくのご回答ありがとうございました。
やはり今回ばかりは、藤巻氏のキャンペーンが現実のものとなる可能性が
高まってきたのですね。心の準備もそれなりの備えも必要ですね。

最近では文春にも、アメリカのファンドマネージャーで、カイル・バス氏という
方の意見として、同様の国債大暴落説の記事が掲載されていました。
[ 2013/07/16 19:39 ] [ 編集 ]
藤巻さん
小松原さん、先日はありがとうございます。

今日、藤巻さんに会い、話してきました。これからの日本経済や投資のアドバイスをききました。ぼくは、藤巻さんの意見にとても共感できました。

あるオススメの株も教えてもらえました(笑)
[ 2013/07/17 18:58 ] [ 編集 ]
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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