仙人の祈り

ビット経済の新ルール - クラウドを制する者が世界を制す

IT革命の前と後では経済の質そのものが大きく変化している。経済学者が謎のデフレに悩んだり、経営者が昔の成功パターンを繰り返して失敗するのは、時代が革命を経た後であることに気づいていないことが要因かもしれない。

このことを「アトム経済からビット経済へ」と表現する人もいるが、このビット経済は「無料経済」と言い換えてもよいだろう。「ムーアの法則」が予言したように、CPUのコストは2年ごとに半分になり、通信速度とメモリーのコストはそれ以上のペースで下落してきた。

ビット経済の新ルール日々の生活や産業界に根付いている「インターネット」の世界は、このCPU・通信・メモリーの3つで構成されているが、これらの価格下落がマイナスの相乗効果を生み出すことで、正味のデフレ率は年率で50%を超えるものとなっている。これが先進各国で起きているデフレ圧力の正体である。

iPhone5SのA7プロセッサーは、一年前に発売されたiPhone5のA6プロセッサーの倍の処理能力がある。数年前に何十万円もした画像加工ソフトや音楽作成ソフトが、スマホのアプリで数百円で売られている。インフレを生み出すアトム経済に対して、我々はデフレを呼ぶビット経済に移行していたのだ。

さて、このビット経済は最近になってようやくその最終的な終着点が予想できるようになってきた。そのキーなるのがクラウドである。アトム経済ではコーネリアスが鉄道を敷き、対抗してロックフェラーがパイプラインを敷いたが、ビット経済ではクラウドと通信が社会インフラの中心的役割となる。

AmazonやGoogleがクラウドへ猛烈な投資を続けているのはこのような時代の変化を先読みしてのことである。現在彼らはスマホやタブレットなどの消費者の手元にあるデバイスを開拓しているが、これらのデバイスはデジタル情報の受信機でしかなく、家電で言うところのコンセントのようなものでしかない。

彼らの最終目標はあくまでも、クラウドを支配し、やがては電力インフラや通信インフラまでも統合する計画である。何故なら、クラウドだけ持っていても、電力や海底ケーブルを他社に握られてしまっては、「クラウド・コンピューティング・パワー」の支配者という絶対的な地位は築けないからである。

家電メーカーは新しいデバイスを作り、サービス企業は無料経済の中で斬新なアイディアを生み出し、スタープレーヤーが出現するだろう。しかし、それらはクラウドの支配者となった米系企業の手の中で転がされているに過ぎず、すべてのデジタル情報は米国政府の息のかかった組織を通過しなければ世の中が回らなくなる。

これがビット経済の終着点である。中国政府がAppleには寛容である一方で、AmazonやGoogleの侵入を頑なに拒む理由はここにある。冷戦時代の核開発競争のように、米中間のサイバー攻撃合戦によって、お互いの陣取り合戦が始まっている。

企業はこのような新時代のルールと国家間の水面下の駆け引きを理解した上で、正しいリスクを取っていく必要があるだろう。(関連記事: 日本企業の賢い生き延び方 - 米国メジャーとトモダチ作戦

BLOGOSで読む
巨大なクラウドに支配された場合、個人情報の扱いは
現在と全く変わってしまうのではないかと考えています。

人間はミスを犯すので、電子頭脳に管理を任せる様な事が起こりそうですね。
[ 2013/09/21 22:28 ] [ 編集 ]
パースペクティブな記事でとても面白いです。これからも楽しみにしています。

アトム経済の次は、ビット経済、その次は不老不死の経済が待っている気がします。
文字通り、人間は不老不死を手に入れる時代が来ると思います。技術の進歩で克服できる欲望は全て達成していくというのが人類の本質な気がします。
[ 2013/09/22 04:50 ] [ 編集 ]
先読みすると
はじめまして、いつも深いご見識に感嘆しております。

大変興味深い記事です。確かにこの先の社会を予想するとクラウドをおさえた会社には逆らえないですし、関所を牛耳る昔の役人のような存在になりそうですね。米国政府がアマゾンにやけに優しいのはこうした先読みから、政府としてもバックアップしているのかも知れません。私は某メーカーのものですが、日本の会社はトップがここまで先読みして動けていないことだけは、よくわかります。
[ 2013/09/22 14:03 ] [ 編集 ]
はじめまして
人生に迷い株を始めて案の定株でも迷ってこちらのブログに辿り着きました。タカラバイオ買う前に辿り着きたかったです。

昨日今日でほとんど読ませて頂きました。株の勉強?でこんなに楽しく読めたのは初めてです。そして投資家となんとなく株始めてみた人の情報格差、姿勢の違い、自分の勉強不足等思い知らされました。ありがとうございますm(_ _)m

これからも楽しく読ませていただきます♪
[ 2013/09/22 20:52 ] [ 編集 ]
Re: はじめまして
皆さんコメントありがとうございます。

そうですね。永遠の命は人類の夢ですし、臓器移植やらナノロボットやら、いろいろと技術が進んでいますね。寿命が伸びてくると、経済の捉え方も当然変わってくるでしょうね。働き盛りが60代とか言われる時代が来るかもしれませんね。

政府がAmazonに優しいのは事実ですね。州をまたいで消費税を払わなくて済むのは、明らかに政治がAmazonに味方しています。日本のインターネット企業でさえ、彼らの恐ろしさを理解していない社長が大勢いますので、ちょっとそういうトップの会社には投資したくなくなってきますね。

投資というのは人生同様、答えがなく、迷ってばかりするものです。しかし、だからこそ挑み乗り越えたものにリターンがあるわけですね。まずは知識よりも、技術よりも、信じる力や忍耐が市場の神から試されます。
[ 2013/09/22 23:55 ] [ 編集 ]
博識に満ち溢れてる管理者サン
結局、危機や道具が進化してモ人の値打ちは太古カラ余り変化してない。

便利に成れば成るホド、職場が消えて行く事にも気付かヌ大多数の日本人。

まぁ〜日本人モ折返し地点へと差し掛かって来た様ですから今後は、厳しいでしょう。

「 投資」…はソノ中で一番、強い部類に属しますので膨張スル業界です。

早く気付いた方が、生存に有利に働く。。。

…別に長生きするツモリはサラサラ有りませんが、今まで通りでは通用しませんネ!
[ 2013/09/23 08:53 ] [ 編集 ]
トップダウン
このような世の中の流れを読んだ上で、さらに中期、短期の戦略へ落として銘柄を選択しているのでしょうか?

よくトップダウンとかボトムアップとか言われますが、結局ミクロよりもマクロを追って方向感だけは間違わないようにした方がいいんですかね?
[ 2013/09/24 06:16 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
皆さんコメントありがとうございます。

そうですね。世の中の流れを読むのは長期投資の基本ですが、当然それだけではありません。業界環境、競争企業、経営者、ビジネスモデル、など、諸々を分析して総合的に判断するしかありません。株というのは、予想以上の変化をした時に上昇します。それが発生する蓋然性の高さを読むのが投資です。
[ 2013/09/24 18:12 ] [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

記事の募集
  • 社会全般や政治・経済に関して、記事の寄稿を募集しています。お名前、タイトル、本文を記載しこちらまでお送り下さい
お問合せ
  • 出版・メディア関係の方のお問い合わせはこちら

管理人(Macoちゃん)が責任をもって小松原氏へ転送致します
人気記事(当ブログ内)
記事検索