仙人の祈り

理論株価の計算 - 将来キャッシュフローの現在価値

「今後5年間、毎年3円のクーポンを受け取れる債券が、最終利回り3%で販売されていたとする。さて、この債券の現在の価格は幾らであるか?」

答えは100円である。金融商品の価格に明確な答えが存在することに違和感を感じるかも知れないが、この場合の価格は一義的に100円に決まる。もし仮に100円以外の価格で取引されていたら、無リスクで利益を得られる裁定取引の機会が生じることになる。

天秤inフランクフルトこれを式で示してみると以下のようになる。分子は投資家が受け取るお金で、この場合は毎年3円、そして最終の5年目には元本である100円が戻ってくる。分母は最終利回りで、この場合は3%なので1.03。分子のキャッシュフローを現在価値に割り引いている。
3/(1.03) + 3/(1.03)^2 + 3/(1.03)^3 + 3/(1.03)^4 + (3 +100)/(1.03)^5 = 100

このような式を初めて見る個人投資家も多いかと思うが、これは何も債券価格の計算のための公式などではなく、株を含めたすべての有価証券に当てはまるものである。将来に発生すると期待されるキャシュフローを現在の価値に換算した金額が、有価証券の価格になる。

同じ考え方で株式の理論価格を求める方法はいくつかあるが、最もシンプルなのは配当割引モデル(Dividend Discount Model)と呼ばれるものである。先ほどの債券の計算の場合、分子のところには毎年のクーポンの金額が入ったが、株式の場合は企業が将来支払う配当金の予想を入れる。

ただし、債券と異なり配当には期限がない。債券の場合は決められた最終年度に100円が還ってくるが、配当の場合はこの部分に(配当額/割引率)で計算した数値を置く。数列に詳しい方ならご存知だろうが、この式は永久に一定の配当が続くと過程した場合の現在価値を求める公式である。

仮に今期末の予想配当が5円の会社が、今後毎年5%ずつ成長をしたとする。そして5年目以降は成長が止まり、その後は一定の配当を支払うとする。分母の割引率は6%とした場合、この株式の妥当な理論価格は以下のように102.62円ということになる。
5/(1.06) + 5.25/(1.06)^2 + 5.51/(1.06)^3 + 5.79/(1.06)^4 + (6.08 + A)/(1.06)^5 =102.62
Aの部分に入る数字 = 6.38/0.06 = 106.36

配当は企業ステージや経営戦略、会計手法によってバラつきがあるため、配当のみから企業価値を算出することに違和感を持つ人もいる。このような考えから、DCF(Discount Cash flow Model)と呼ばれる、企業が実際に稼ぐ現金の予想から1株当たりの理論価値を求める方法もある。ここでは紹介はしないが、考え方は上記と全く同じものである。

バックテストを行うと、株価はこれらの割引モデルから導出された理論価値に結局は収斂することが分かっている。PERなどの指標で株価が高い安いと論じていても堂々巡りを繰り返しているのはある意味で当然で、市場が日々の売買によって向かっているのは、実はこの将来のキャッシュフローの現在価値であるからに他ならない。

この手法は、キャッシュを生むすべての有価証券や不動産、事業プロジェクトなどの現在価値の計算に使用されている。もちろん、分子のキャッシュフローの予想は簡単ではないし、分母の割引率も厳密には日々変動するものであり、適正な現在価値を計算することは簡単ではないが、金融資産の価格がこのように決定されていることを知ると知らないでは、投資に対する心持ちが随分と異なることであろう。
[ 2013/10/30 18:00 ] 投資全般 | コメント(18)
こんばんは
DCF法挫折中の迷走中です。

本文の式初めて見ましたし、今回に限らずブログ拝読してから心持ちはかなり変わりました。本当にありがとうございます。

最後にもしも私と同じレベルの方がいたら いないか 笑
^この記号何?と思って検索手間取ったので http://www.relief.jp/itnote/archives/003409.php に詳しく書いてありました。計算も自分では絶対できないけど式コピペして検索したら答え教えてくれるし凄い時代になったものです。
[ 2013/10/30 19:16 ] [ 編集 ]
ガンポー
ガンホーは仕手株、必ず下がります、という以前のコメントの真意が理解できない人も大勢いるはずですが、こうした概念で株価の価値があるとすると、そりゃないよねというのが心底分かりました。今日はかなりの収穫です。小松原さんは仙人というより、仙神ですね。
[ 2013/10/30 19:35 ] [ 編集 ]

ちょうど株価の理論価格の求め方を聞きたかったところ、ありがとうございます!

割引率はどうやって求めるのでしょうか?
[ 2013/10/30 20:45 ] [ 編集 ]
小松原さんこんばんは

本日の任天堂の中間決算はどう見ますか?かなり酷い状況になってるなあという印象ですがいかがですか?
ここの社長は最近ちょっと常軌を逸してるように見えるのですが。
[ 2013/10/30 22:57 ] [ 編集 ]
緩和継続
チョウチョウ、言い残した事が有りましたニョデ一瞬ジャケ復活劇ヲ遂げまつ。

「FRB/バーニャンキ議長chan」…は緩和継続ヲ維持にょ様でつが、減額分は50億〜100億ジョル。

市場アニャリツトのコンセンチャツでは「3月」…や悲観的な人は「6月」ちょ申されてまつ。

ちかち850億ドルの内、意表ヲ突いてイジワルに半減( MBS分〈 ¥400億ドル 〉ヲ消去 )!(^o^

ポンチョは仮に「あまねサン」…にお叱りヲ受け様とも『1月』…ちょ思うでつぉ〜
【 コリは毛ッコーコケコッコー、自信が有りまつぉ! 】

先にょお話でつが一応、黄ヲ付けて おクンシャイね。( じゃ、バイバイ菌!
[ 2013/10/31 04:30 ] [ 編集 ]
Re: 緩和継続
皆さんコメントありがとうございます。

割引モデルの計算はエクセルなどがあると簡単にできますが、手計算だとなかなか大変ですね。割引率の計算というのは結構複雑ですので、他のサイトなどで検索してみて下さい。本文中に書いたDDMの場合の割引率にはCAPMとよばれるものを、DCFの場合にはWACCと呼ばれるものを使います。

任天堂はこれからニューオータニで説明会ですが、概ね予想どおりですかね。ビジネスモデルを諦めてくれない限りは投資家は評価しにくいのではないでしょうか。

米国はモーゲージ金利上昇で住宅が弱ってきているのが気になりますね。FRBの舵取りは要注目です。
[ 2013/10/31 08:59 ] [ 編集 ]
←「シェールガス革命のポテンシャル」
丁度、左側の項目に「シェールガス革命のポテン〜〜〜」…ちょ、有りまつ。

ポンチョも「あまねサン」…のご意見通りだちょ思いまつが、、、

同じ売るにゃら勿論、「ドル安?」…にょ方が差益モ豪快に特盛りでつね!!!!!

日本モ安く仰山買いたいニョデ有れば、「円高?」…ならば更にお値打ち価格。

にゃらば、、、「バーニャンキchan」…がコノ時を逃す手立ては皆無でつ。。。

住宅バボォ〜崩壊 ⇒「ドル安?」⇔「円高?」…ッテ仕組まれちょるのかにゃ?( 笑

世の中、上手い事システミリックが構築ちゃれとりまつにゃ!!!!! (^o^


※ オヨョ〜、言ってた蕎麦屋カラ凄いッスにゃ!!!!!( ↓)
「Apple」…や「Google」…の下請け企業に成るのも時間にょ問題?
「東電」…の黒転モ最早、バッタもんでつね。(^。^)


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MVLCFP6VDKI101.html

[ 2013/10/31 10:01 ] [ 編集 ]
DCF法について、2つ質問させてください
成長型永久債のPV=C÷(R-G)になっています

(R-G)が負なら、PVも負になります
これはどういう意味でしょうか?
割引率よりも成長率が高いと、価値が下がるわけではありませんよね

C、R、Gが一定なら、1年後にCを受け取っても、PVはそのままです
株式にあてはめると、株式益利回り(PERの逆数)=年間株式収益率になるということですか?
純利益をすべて配当に回すなら、配当利回りに等しくなると思います
[ 2013/10/31 14:10 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
最初のご質問ですが、定率成長の配当割引モデルでは、r > g という前提が必要です。これがこのモデルの欠点でもありますね。故に実務ではDCFを使うことが多いですね。
2つ目のご質問はちょっとよく意味がわかりません。すみません。
[ 2013/10/31 14:50 ] [ 編集 ]
返信ありがとうございます

1つ目の質問について
やはり、そうですか
成長型永久債の導出過程でr > gという条件はないのに、
r > g という前提が必要なのは不思議ですね
ありがとうございます

2つ目の質問について
純利益をすべて配当する会社があるとします
1年後もDCF法の3要素が同じであるとすれば、
年間でのC=純利益=配当総額なので
配当の権利落ち後の時価総額は1年前と同じになります
つまり、年間収益率である永久債の利回り(=年間利子÷債券価格)と
永続会社の配当利回り(=配当総額÷時価総額)と同じ意味です
ここまでは、先ほど自分で問題を整理している内に、そうであるとわかりました
質問は
内部留保もするふつうの会社の株なら、売却益も合わせると
年間収益率は株式益利回り(=純利益÷時価総額)ですか?
ということでした
何を聞いているのか、わかりにくく、すいませんでした
[ 2013/10/31 18:13 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
すべての他の条件が変わらず、市場は企業が単年度で稼いだ利益の分、企業価値が上昇すると評価してくれるならば、益回りが期待収益率ということになりますので、間違ってはいません。

しかし期待収益率のrとはあくまでもr = CAPMですので、間違えないようにしましょう。
[ 2013/10/31 18:45 ] [ 編集 ]
なんだいなんだい!皆自分の事ばっか!
アイドルの私が居ないのが気にならないのか?
情けないよアタイは!

私は皆のために一生懸命カモになってるのに!もう日経から資金を引き揚げよう!
明日はS安だけど皆が薄情な奴ばっかりだから罰が当ったんだ!

ハッハッハッ・・・ハ~・・・カンからコ~ん・・・ホントだからな!アッハッハッ・・・ハ~

誰か助けて~
[ 2013/10/31 19:24 ] [ 編集 ]
少し話が変わっているかもしれませんが
永遠にROEが10%、PBRが2倍と一定で
配当を出さず、純利益を株主資本にする会社を考えます
株主資本を100円とすると、PBRが2倍なので
現在の時価総額は200円です
ROEが10%なので、1年後の株主資本は110円
同様にして、時価総額は220円です
株価上昇率は10%でROEに一致します
ところが、ROE×PER=PBRなので、PERは20倍です
なので、その逆数である株式益利回りは5%です
株価上昇率が株式益利回りになっていないのはどうしてなのでしょうか?

勉強中なのでおかしな所があるかもしれませんが、
よろしくお願いします
[ 2013/10/31 19:50 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
投資勉強中さんはなかなか熱心に勉強されているようですね。

しかし何故PBRが2倍という前提を置けるのでしょうか?2倍ということは、その会社の将来性にプレミアムを付けているということです。

最も大切なところで重要なミスをしていませんか?よく考えてみましょう。
[ 2013/10/31 20:34 ] [ 編集 ]
さっぱりわかりません
プレミアムが大きすぎるということなんでしょうか?

PBRが1.1倍で計算すると、
株価上昇率は11%、益利回りは約9.1%です
ますますわけがわからなくなりました

益利回りはPBRが1倍のままだった時の株価上昇率ということですか?
[ 2013/10/31 21:01 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
金融の基礎を知らずに各論から学んでも、生兵法になるだけです。その問いがどうしても解けないのであれば、学校の先生などに聞いてみるとよいのではないでしょうか。本稿の趣旨から外れていますし、他の読者には迷惑なので、これ以上はお答えしません。
[ 2013/10/31 22:00 ] [ 編集 ]
デリバティブ
いつも有意義な情報をありがとうございます。
デリバティブ懸念しています。
ネガティブキャンペーンで終わればいいのですが。
[ 2013/11/01 10:17 ] [ 編集 ]
う~退屈だな~!誰かに絡みたい!誰かをいじりたい!誰かいませんか?
[ 2013/11/04 19:17 ] [ 編集 ]
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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