仙人の祈り

アベノミクスの背信者たち - 内需系企業は変われるか

「若い人が集められない」という声が日本の内需系企業で日増しに大きくなってきている。当初、このような現象は「建築業」や「運送業」で観察されていたが、やがてそれが「居酒屋」や「レストラン」にまで広がり、最近では「家電」や「小売」の経営者までもが「人手不足」に悩んでいる。

その一方で、製造業の請負・派遣業は人員が増加の一途を辿っており、時間当たり賃金は過去最高値を付けている。円安で攻勢に出ている外需系企業が、いち早く給料を上げ、やる気のある若者を確保していることが見て取れる。つまり、外需系が高い賃金で内需系の人員を奪い取っている、という構図だ。

inflation_Japan2014若者の本音を代弁すれば、「運送業」は疲れるし、「居酒屋」は夜のシフトが多いし、「家電」も土日が潰れるので割に合わない。同じ給料なら「カフェ」や「アパレル」などを選好し、高い給料を貰えるならば工場の生産ラインも我慢する。「時間を切り売りする」ことに関して、労働の供給者側である若者は、意外にも費用対効果をドライに考えていると言える。

このような状況の中、取材をしていて感じることは、内需系企業の経営者たちは、日銀とタッグを組んで円安誘導をしているアベノミクスに対して、あまり良い感情を持っていないということだ。「円安→輸入原価増→利益減→人件費を上げられない→労働力を確保できない→売上減→利益減」という悪循環から抜け出せず、政策の偏りに不満を漏らす。


しかし、酷な言い方になってしまうが、このような企業はアベノミクスの本質がわかっていないと言える。それは6月に政府から発表された「日本再興戦略 改訂2014(第三の矢)」の冒頭の文言を見てもわかる。『日本経済は、20年以上も続いた経済の低迷の結果、デフレ・マインドという宿痾(しゅくあ)に取り付かれ、、、』と書いてある。

日本経済は復活のためのラストチャンスにあり、失敗は許されない。そしてその成功と失敗のバロメーターを「インフレ」という数字の一点に集約しましょう、というのがアベノミクスだ。卵が先か鶏が先かの議論はさて置き、一貫して「インフレ」方向に向いた政策しか取らないのである。

言い方を換えると、諸々のコスト上昇を価格転嫁できないような、競争力のない内需系企業は「切り捨てる」ということである。鏡の向こうの外需系企業は、円安でゴールデンタイムを満喫しているが、内需系企業はこれまでのような「値下げ」や「出店」という競争をすぐにやめて、コスト増を価格転嫁し、収益性を高めていく道を歩むしかない。

識者たちは「第三の矢」における構造改革が、岩盤の既得権益に踏み込めていないことから「本気度が足りない」と批判するが、そもそも「景気回復=構造改革」という発想は、思い込みにすぎない。アベノミクスは最初から、産業界を「インフレ教」に改宗させるために、外堀から埋める施策に注力しているだけなのである。

確かに、医療や農業、教育、その他不要な規制など、改革すべき領域はたくさんある。ただそれは、景気回復に対して即効性がないため、残念ながら喫緊の課題ではない。それ程までに、日本経済には時間的な余裕もなければ、投資家の許容度もないのである。

アベノミクスは、限られた選択肢の中で、取り得る策を紡ぎ合わせて、微妙な心理戦を展開していると言える。最近では、不満を持つ背信者を「インフレ教」へ改宗させるための材料として、「法人税減税」という、内需系企業にとってのゴールデンタイムを検討していることなども示唆し始めた。

前述のような某大手の社長の愚痴を聞いている限り、彼らはまだデフレに対応した発想しか持ち合わせておらず、インフレを前提とした戦略変更に二の足を踏んでいる。しかし、このまま物価変動の最大の主体である内需系企業が「インフレ教」に改宗できなければ、アベノミクスはタイムオーバーを迎えてしまう可能性が高い。

日本経済の命運は今、彼らの決断に委ねられていると言える。

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[ 2014/08/01 18:00 ] 経済社会 | コメント(4)
本当のことを教えよう。
日本の内需系企業が集められないのは、若い人ではなくてキャバクラ嬢だ。で、今頃になってマスゴミに媚を売って人手不足と騒いでいるのは、昔からブラックなことで有名な業界だ。
要は、ブラック企業というレッテル貼りを避けるための行動に過ぎない。
外需系企業がゴールデンタイムを満喫していると言っているが、果実は為替の影響だけで、実態は再生不能なほどに退化している。
つまりこのアベノミクスというバカ騒ぎが過ぎて残るのは、何も無い。産業としての実力は、もはや東南アジアに奪われている。東京でオリンピックが始まる頃には、アフリカに奪われているだろうね。
物価変動の最大の主体である内需系企業が「インフレ教」に改宗できなければ、アベノミクスはタイムオーバーを迎えてしまう可能性が高いというが、今やっていることは、30年前にやるべきことであって、今更何をやっても焼け石に水でしかない。
あぁーあ。いつ気づくんだろうね?。このア○ルリストは!。
え?じゃあ何をしろって?GDPは現状維持で良い。ただし、人口は今の3分の1に減らせ。そいういう制作を取れば万事解決だ。
[ 2014/08/02 17:22 ] [ 編集 ]
↑ 痛すぎる(*_*)
[ 2014/08/03 05:49 ] [ 編集 ]
安部ノミクスは先が見えて来た感があるけど、

問題はアメリカ市場?調整しないのかな?やっぱ調整が始まると大きいんだろうな!調整するとドル安で円高???どうしよ?????シェール革命はそのあとか???誰か~

※だれもアメリカ市場について答えてくれない!日本は消費税残り2%上げ決定まで何とか持つでしょうが!アメリカ市場は?????誰か~
[ 2014/08/03 11:15 ] [ 編集 ]
アベノミクスって
資本が集中すればするほど総需要が減少するのは当然で、高い人件費を嫌って海外生産やロボット生産を増やせば増やすほど、GDPの大半を占める消費の源である国内労働者に支払われる賃金総額は減少します。また、少子高齢化が生んだ労働力不足とIT革命による労働力分配のいびつさが雇用のミスマッチを引き起こしています。

そこで安倍ちゃんと黒ちゃんコンビが考えたのがインフレ政策と構造改革なのしょうが、カンフル剤としての金融・財政政策がどれだけインフレに繋がるのか、もしハイパーインフレになったらどうするのか、予断を許しません。本丸の構造改革は、農業~医療・介護まで幅広く取り上げられていますが、これも抵抗勢力に阻まれ骨抜き状態が続いています。

ここで一番の問題は、日本の法人の3分の1が赤字続きで本来は淘汰されなければならないのに、各種の制度によって守られ維持されていることだと思います。ここには優秀な人材も多く張り付いたままになっており、仮にこの人材を他の業界に振り向けることができたら、日本の人手不足の多くは解消されることになると考えます。当面、カンフル剤も必要なのでしょうが、薬が効いている間に産業構造の改革をしっかりやってもらいたいものです。
[ 2014/08/04 12:22 ] [ 編集 ]
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筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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