仙人の祈り

日本の貧困率増加とその元凶

厚労省が公式発表している日本の貧困率は、年々増加の一途をたどっており、足下では16%の世帯が、貧困層に分類されている。

この貧困の定義はOECDで定められた統計的な基準によるものであるが、具体的には、日本の場合、世帯当たりの手取り収入で240万円、労働者一人当たりで120万円がそのボーダーラインとなる。ちなみに意外かもしれないが、日本のこの16%という貧困率は、加盟34カ国のうちメキシコ、トルコ、米国についで、第4位という不名誉な状態にある。

the-difference-in-Mexico2015さらにこれを性別・年齢別にわけて、それぞれを時系列で見ていくと、日本社会のゆがみが見えてくる。直近20年の変化では、24歳以下の男女の貧困率が大きく上昇(約+10%)する一方で、65歳以上の男性の貧困率は大きく低下を見せている。つまり、すでに社会問題となっているように、若者世代の困窮が、数字の上でも確認される状態となっている。

この要因の一つとしては、これまでの不況や、それによる就職難、非正規社員の拡大などがある。しかし、あまり知られていないが、もっと大きな理由としては、政府による所得の再分配が、まったくと言ってよいほど機能していないことが、この問題の根底にある。

「地方創生=農業改革」はメディアの描いた幻想

全中から監査権を奪い、単なる社団法人へ格下げしたことは、農協解体へ向けた第一歩として評価できる動きである。中長期的には、莫大な予算を持つ農林水産省も格下げに向かうだろう。ただ、安倍首相としては、農業改革を断行することにそれほど思い入れがあるわけではなく、その本心は、TPPに反対して日米関係の足を引っ張る彼らを押さえ込むことにある。

日経新聞のような”一流メディア”が、このような事態の本質を見抜けずに、「農業改革こそ地方創生の第一歩」と盛り上がっているが、これは明らかに論点がずれている。日本の農業はGDPに占める割合は1%程しかない、零細産業である。それが効率性を今の倍に上げ、輸出額も現在の4,000億円から引き上げたところで、地方はまったく潤わない。

shatter mall 201503それどころか、200万戸の農家に本当の効率化の波が押し寄せたら、地方から人はいなくなり、都市への人口集中が更に加速するだろう。海外の事例を参考にすれば、農業に係わる人口は100人に1人の割合で十分である。技術力、開発力に優位性のある日系の食品メーカーは、すでに海外での現地生産へシフトしており、日本の「農業」や「食」は、所得収支として国内に還元されている。

農業改革それ自体は、農協、県連、全農という無用なピラミッド構造を排除し、農家の赤字を補填しているだけの助成金を減らすという意味では意義のあることだが、地方創生には決してならない。この2つの事象をごちゃ混ぜにして、「地方創生=農業改革」という考え方で様々なことを進めていくと、多くの努力が徒労に終わってしまうだろう。

「クジラ」が「ゴジラ」になる日

「今日はクジラは動いたか?」世界中のファンドマネージャーたちは、毎日のようにブローカーに東京市場の売買フローを問い合わせている。彼らが気にかけているのは「クジラ」と呼ばれる、日本株の新しい買い主体(日銀、GPIF、共済、かんぽ生命、ゆうちょ銀行)の動向である。概算で27兆円もの買い余力があると言われる5頭のクジラは今、その一挙手一投足が、世界中の市場関係者から注目されている。

新たな買いインパクトという意味では、日本の個人投資家も無視できない。上昇相場の中でも継続して売り越し、「逆バリ投資家」として名を馳せてきた日本の個人投資家であるが、今になって買い越しに転じ始めている。事実、過去最高となる13兆円弱まで積み上がっていたMRF&MMFの残高は(NISAの待機資金も含まれる)足下で減少しており、逆バリの個人投資家が珍しく順バリになっていることがわかる。

godzzila2015そして、本物のクジラである海外の大手機関投資家は、まるでこれらの動きを見越していたかのように、昨年から継続的に日本株を買い越している。サード・ポイントのようなアクティビストだけではなく、コーポレートガバナンス・コードの導入が決まり、先進国で最低となっている資本効率にメスが入り始めていることを好感し、海外のロングオンリーの大投資家もまた、日本株のウェイトを引き上げている。

以上のように、公的、個人、海外という3つの主体が、日本株に買い圧力を与えていることが、最近の株高の正体である。私も今回のコーポレートガバナンス・コードの策定には、その素案作成の段階から協力をしてきた。だが、客観的に見るとそれは壮大なシナリオの中の一つのパーツにすぎない。アベノミクスでは、持ち得る限りの施策が総動員され、日本株へ資金を呼び込むような仕掛けとなっていることに、あらためて気づかされる。

与えられしメアリー姫の将来のために

各国で度々ニュースになる、出産直後の赤ちゃんの取り違え事件は、当事者たちにとっては不幸な出来事であるが、人類学や社会学的な観点からは、これ以上ない壮大な実験結果と見ることもできる。

取り違えられた赤ちゃんのその後の人生は、明確に育ての親のスペックの影響を受けており、外見などの遺伝的な要素を除くと、能力から性格、感覚、感性まで、その人の人生を形成する多くの要素が、後天的な環境から影響を受けたものであることがわかる。

20150220グラセン(Grand Central)から電車で30分ほど北上したところにScarsdaleという高級住宅街がある。元上司のアッシュは、ここで一人娘のメアリーと暮らしている。メアリーに父親はいない。離婚したのでも、他界したのでもなく、最初からいない。彼女は出産リスクが高まる前に、優秀なイケメン男子の遺伝子を買い、未婚のままメアリーを生んだのだ。

庭でラブラドールやハスキー犬と無邪気に戯れるメアリーは、まるで天使そのものだ。最近はピアノにハマっているそうなので、私が一緒に連弾してハモってあげると、メアリーは「まるで魔法みたい」と、テンションMAXではしゃぎ始めた。感受性豊かで、まっすぐな子供だ。

テロリストの頭上にパンを雨を

「衣服足りて礼節を知る」とは、紀元前7世紀、斉の桓公に仕えた宰相、管仲(かんちゅう)の言葉と伝えられるが、現代でも通ずるところが多い。

絶えることのない戦争やテロの原因を考える時、そこには貧困という共通項がある。『生活が豊かになれば道徳は高まり、衣食が十分であれば名誉や恥を知る。その日の暮らしにことかく者に礼節を説いても、何も得るものはない』。管仲は人の性を見抜いた上で、まず人民を豊かにすることが大切であると考えた。

annpanman2015ノーベル平和賞を受賞したマララさんが説くように、争いのない世の中のために教育が不可欠であることは疑いない。しかし、腹を空かせた人の前に「ペン」と「剣」があるとして、普通の人間はそこで「ペン」を取ることはできない。テロリストたちが宗教を語り、略奪を正当化するのは許せない行為であるが、彼らがテロリストに堕ちる前に、貧困や絶望があったことは忘れてはならない。

豊かな西洋諸国が頭上からミサイルを撃っても、貧困という非道徳を育む状況がある限りは、いつまで経っても地上からテロを根絶することはできないだろう。そんなことをするくらいなら、空からからパンをばら撒き続けた方が、よほど効果があるかもしれない。暴力に暴力で応じても、そこには暴力が残るだけである。負の連鎖を断ち切るために、先進国の側にも、相手(敵)を知る想像力が必要だ。

完全ではない民主主義の統治システム

『世界には40人しかいない』と、昔ある人から教わったことがある。ネットやメディアを通じて見る世界は、日々激しく変動しているように見えるが、自分を中心とした日常の世界には、実のところ40人ほどの出演者しかおらず、その他のものは背景画のようなものにすぎないことを比喩している。

私が衆院選を見ていて思ったことは、有名な政治家であっても、それはあまり変わらないということだ。後援会や支持者、その他大勢の関係者に取り囲まれていても、その人にとっての世界は、親族や親友、恩人、仇敵などの一部の登場人物しかいない物語であり、極論すると、その他は熱のない言葉や数字でしかない。

20141207民主主義、社会主義、独裁主義、血統主義など、どのような統治システムであっても、国民にとって望ましい為政者が続くわけではないことは、歴史が証明している。その人の本質を形成する40人との繋がりや関係性まで考えると、そのパターンは無限大に近く、どのようなシステムによっても管理することは難しいと言える。

民主主義は為政者を国民が選ぶことで、その思想的なアイデンティティーが保たれているが、注意しなければならないことは、それが常に絶対的に正しい選択であるとは限らないということだ。為政者が表立って約束していることの他に意図することがあったとしても、有権者がその真意を見破ることは、なかなかできない。

日本の経営者が知るべき「チーム」の力

「組織とチームの違いをご存知ですか?」と聞いて、まともに答えられる日本の経営者は、いったい何%いるだろうか。

往々にしてダメな経営者というのは、「組織」のことは分かっていても「チーム」のことは分かっていない。自分が組織の中での叩き上げで社長になったのだから無理もないことであるが、それでは海外の競合他社に勝つことはできない。

teambuilding201412組織というのは「営業部」とか「海外業務部」とかいったように「決められた仕事」を実行する部隊の総称である。一方で、チームというのは、会社が今よりも一段の競争力を上げるための開発や、イノベーションを起こすための「プロジェクト」を担当する人たちの総称である。

『その件については、社内のプロジェクトを立ち上げて、鋭意取り組んでいる』という言葉はよく聞くが、その「プロジェクト」にアサインする「チーム」はどのように築いたのかを問うと、現場に指示を出しただけで何も考えていないという経営者が多い。
筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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