仙人の祈り

アベノミクスの背信者たち - 内需系企業は変われるか

「若い人が集められない」という声が日本の内需系企業で日増しに大きくなってきている。当初、このような現象は「建築業」や「運送業」で観察されていたが、やがてそれが「居酒屋」や「レストラン」にまで広がり、最近では「家電」や「小売」の経営者までもが「人手不足」に悩んでいる。

その一方で、製造業の請負・派遣業は人員が増加の一途を辿っており、時間当たり賃金は過去最高値を付けている。円安で攻勢に出ている外需系企業が、いち早く給料を上げ、やる気のある若者を確保していることが見て取れる。つまり、外需系が高い賃金で内需系の人員を奪い取っている、という構図だ。

inflation_Japan2014若者の本音を代弁すれば、「運送業」は疲れるし、「居酒屋」は夜のシフトが多いし、「家電」も土日が潰れるので割に合わない。同じ給料なら「カフェ」や「アパレル」などを選好し、高い給料を貰えるならば工場の生産ラインも我慢する。「時間を切り売りする」ことに関して、労働の供給者側である若者は、意外にも費用対効果をドライに考えていると言える。

このような状況の中、取材をしていて感じることは、内需系企業の経営者たちは、日銀とタッグを組んで円安誘導をしているアベノミクスに対して、あまり良い感情を持っていないということだ。「円安→輸入原価増→利益減→人件費を上げられない→労働力を確保できない→売上減→利益減」という悪循環から抜け出せず、政策の偏りに不満を漏らす。
[ 2014/08/01 18:00 ] 経済社会 | コメント(4)

ネット広告に侵される「プライバシー」

ベネッセによる個人情報の流出事件が社会問題となっているが、今回の事件を機にDM(ダイレクトメール)に社会的なメスが入ったことは、郵便受けがいつも不要なDMに支配されている一消費者としては、大変ありがたいことである。

私の場合、恐らくは、新聞屋や、EC業者や、クレジット会社などが裏で情報を横流ししているのであろうが、見ず知らずの組織に、氏名や性別、人種、年齢、住所、職業まで知られていると思うと気分が悪いし、ゴミ箱直行なので紙の無駄でもある。

x-pose201407企業による個人情報の取り扱いに関しては、本質的にはDMだけでなく、今後はいろいろな方面へ問題が波及していくだろう。消費者は会員カードをつくったり、アンケートに答える度に個人情報を取られるのに対して、企業側への厳格な罰則規定がないため、安全性がまったく担保されていない。まずはこの辺りの法整備が進みそうだ。

一方で、インターネット上で勝手に吸い取られている個人情報までは、今回は踏み込むことはできないだろう。最近流行の「ビックデータ」は「個人を特定できないように加工してあるのでOK」という企業側の論調が支配的になってきているが、何処で何を見て、何を買って、その後どうしたか、などの詳細なデータは十分に個人情報と言えるものであるし、それらを繋ぎ合わせれば、実際には個人を特定することも可能となる。
[ 2014/07/25 18:00 ] 経済社会 | コメント(6)

ベネッセに学ぶ - ホールディングス体制の危うさ

『会社名に”ホールディングス”が付く会社は慎重に見た方がよい』と以前にコメントしたが、今回のベネッセ・ホールディングス(HD)による顧客データの流出騒動はこの法則にピタリと一致する事例と言えるだろう。

この話題はセンシティブな時期にあるので、すべてを語ることは控えたい。ただ、外部から企業を観察する一投資家としては、ノーサプライズというのが正直な感想である。そのくらい同社のガバナンスはザルであるという認識を持っていた。

benesse_promo_poster2014最初に違和感を覚えたのは今から3年ほど前であった。ベネッセの成長ドライバーであった中国の「こどもチャレンジ」(楽智小天地)の成長率が、僅かに期待を下回り始めていた。その後、私の情報網から同事業の現地での評判があまりよろしくないという報告も上がってきた。

私はこれらを受けて、ホールディングスの経営陣に会う度に中国事業の進め方や、責任者の仕事ぶり、現地の事業パートナー(福利会)との関係等について多くの質問を投げかけたが、毎度満足のいく回答は得られなかった。

[ 2014/07/18 18:00 ] 投資全般 | コメント(3)

Googleに見るIT革命の行方

少し前まで「テクノロジーの進化」と言えば、半導体の微細化や液晶の薄型化、省電力化に象徴されるようなハードの進化を指すことがほとんどであった。株式市場でも、半導体大手の月次や、装置メーカー、化学メーカーの最新動向などに一喜一憂していたものだが、今ではあの手の山師たちは何処へ行ってしまったのか、正直言ってよくわからない。

それに変わって近年では「テクノロジーの進化」と言えば、ITサービス系のソフトの進化を指すことが当たり前になってきた。中でも、トップランナーというか、すでにルールメーカーの地位を確立しつつあるのがGoogleである。検索エンジンとして世界制覇を完了したのは周知の事実であるが、彼らは今、ITの力で世界を変えるような壮大なビジョンを有している。

ITrevolution_by_google2014その前段階として、近い将来に制覇を狙っている分野に関しては、すでに私たちにも見えるかたちで動きを示している。それを簡単にテーマごとにまとめると、「プラットフォーム・OSを制する」「インターフェイスを制する」「クラウドを制する」「通信インフラを制する」「エネルギーを制する」「デバイスを制する」と大別できる。

例えば、Androidを搭載したGoogle Glassで見たものにウインクをすると、その商品をGoogleで検索でき、内容を見て欲しいと思ったら「買い」と声を出せば、その場で購入できる。Googleは自社のプラットフォームからECサイトへ送客をし、成果報酬を徴収する。これらのデータ通信そのものは、すべてがGoogleの仮想通信ネットワークインフラによって成されており、Ciscoのルーターなどをまったく経由していない。
[ 2014/07/10 18:00 ] 経済社会 | コメント(3)

ネット革命の最先端 - 次世代インターフェイスの可能性

「ネットとリアルの融合」ということで「オーツーオー(Online to Offline)」という言葉を最近よく目にするが、インターネットはすでに私たちの実生活になくてはならないものとなっているため、「ネット」というものを敢えて一つのカテゴリーとして切り出してフォーカスすることは、それ自体が古臭い気がする。

後世の歴史の教科書から見れば、我々が目にしているものは17世紀の「産業革命」と並んで、21世紀に勃興した「インターネット革命」と呼ばれるようなものであり、2010年代はまだその途端にすぎない時代として語られることだろう。つまり、急速な生活環境の進化は、まだ始まったばかりにすぎない。

telepathy201407いろいろな会社を取材していて最近感じていることは、どうやら「インターネット革命」の現時点での最先端は「インターフェイス」にあるようだ。消費者がリアルの生活の中でインターネットを活用することは定着したが、現在はネット世界への「入口」を、いかに効率化することができるのかに注目が集まっている。

先日発表されたAmazonのオリジナルスマホの「Fire Phone」はその一例と言える。欲しい商品にスマホをかざすと、搭載されたカメラで映像や音声を認識し、その情報をAmazonデータベースと照合することができる。つまり消費者は、スマホに文字を打って検索するという手間を省き、リアルの生活から簡単にオンラインショッピングができるようになる。
[ 2014/07/04 18:00 ] 投資全般 | コメント(16)

日本人は「真面目?」それとも「クソ真面目?」

世界の人々に「日本人の性格を一言で表現するなら何ですか?」と聞けば、十中八九「真面目」と答えるだろう。

それはイタリア人が「女好き」で、インド人が「時間にルーズ」で、ブラジル人が「陽気」というレベルのステレオタイプに過ぎないものだが、「真面目」という言葉は少なくとも良い意味で使用される形容詞であるので、我々は先人たちに感謝した方がいいかもしれない。

umbrella_shibuya201406実際には、私の周りには異性と話すのが苦手なイタリア人の友人がいるし(ちなみにサッカーも下手)、いつも定時よりも早めに来るインド人の同僚もいる。根暗なブラジル人や、正直者の中国人、貯金好きのギリシア人なども、探せばたくさんいるだろう。

こうした中、不思議なことにアメリカ人だけはステレオタイプを体現したような、ジョークが好きで、楽しみ上手で、大雑把な人たちが多い。移民だらけのアメリカ人が「アメリカ人的」に変化するメカニズムは解明されていないが、もしかしたらそれは様々な呪縛から解放された、本来の人間らしい姿に一番近いと言えるのかもしれない。
[ 2014/06/27 18:00 ] 経済社会 | コメント(6)

自分の夢に生きるということ

創業社長とミーティングをする時に、私が相手に必ず聞くことがある。それは「貴方の夢は何ですか?」ということだ。機関投資家からそのような抽象的な問を投げかけられたことに対して不意をつかれたようなリアクションを見せる人もいるが、大概の社長がとても嬉しそうに、そして少しあらたまって話しを始める。

「戯言だと思って聞いて下さい」と言いながらも、力のある人物ほどにその眼差しは強く、イキイキと話をする。「時価総額1兆円の会社になりたい」とか「世界中の人々に自分たちのサービスを届けたい」とか「圧倒的なパイオニアである競合他社をいつの日か抜き去りたい」というようなことを語る社長が多い。

NYC201406大風呂敷を広げているなどとは誰も思うまい。彼らはある程度の成功を収めて上場企業にまでなったわけだし、今も無我夢中(我なし夢の中)で夢の軌跡を歩んでいる最中である。逆に、今の延長線上にあるようなものを夢として語るようでは、この先の成功は期待できないだろう。

こうした中で、特に印象に残っている人物がいた。私がいつものように夢を聞くと、彼は「自分で描いた夢」を生きることが如何に大切なことかを切々と語り始めた。学生時代から他の誰にもできない新しい価値を創造したいと思っていたため、卒業後もどこにも就職せずに自宅で新サービスの構築を黙々と準備していた。
[ 2014/06/19 18:00 ] 雑感 | コメント(10)

気圧の変化と気持ちの変化 - 謎の飛行機頭痛とともに

飛行機での移動は何度繰り返しても好きになれない。上空にいる時は機内の気圧が低いためか、血の巡りが悪くなり、気分が陰鬱になってくる。

もっと酷いのは着陸に向けて飛行機が降下し始める時で、地上が近づくにつれて機内の気圧が上がり、眉間の奥の副鼻腔のあたりがその変化に対応できずに激痛を返してくる。経験上、行き先が海沿いの空港であるほどにその痛みが大きくなることがわかっているのだが、それが何故なのかは現代の科学では未だ解明されていない(多分)。

移動中このことは私の周囲の人間にいつも訴えているのだが、理解してくれる人は誰もいない。「耳栓をすれば?」とか「寝てればいいんだよ」という返事はまったく頂けない。それで万事解決するくらいなら誰も苦労はしない。今のところ考え得る策としては、与圧ができるヘルメットを開発し、移動中ずっと装着するというものであるが、そのようなことはまず航空法が許してくれまい。

これまでに、唯一この悩みを共有できたのは、カナダのオタワ空港の待合室で出会った初老の紳士だけであった。私が雑誌を捨てる前に、折り目を付けて記事を切り取っていると、近くにいた彼が話し掛けてきた。元大手エナジーで掘削機の開発をやっていたらしく、私がそれっぽい記事を読んでいたことと、雪でフライトが遅れており暇だったことが重なり、たわいもない会話のパス回しをしていた。
[ 2014/06/11 18:00 ] 雑感 | コメント(9)
筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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